第42話
今日の予定は二つ。
どちらも探索者組合でのことだけど、俺達は少し早めに行動を開始した。
今の二人はアクセサリーに付与した擬態の効果で別の姿になっている。
もしルゥビスから捜索の手が伸びていたとしても見た目で同一人物と思われることは無いだろうけど装備から足がつく場合もある。そう考えて装備を新調することを提案した。
今の
おっと、思考が脱線した。
最初に向かったのは市場の露店。
掘り出し物がないかと思ってやって来たんだけどそう上手い話は無かった。
「やっぱり、そううまい話はないねえ」
「そういえば
「俺? 俺はコレ」
刃長九寸程度の鍛造ナイフ。
ルゥビスの探索者組合で働いている時に貰った解体ナイフ。
「えっ、それ解体ナイフじゃないの?」
「私もそう思ってた」
「ん、他のを持ってるの、見たことない」
「これは
「ん」
「賛成」
「え〜、これじゃあ駄目かな。一番しっくりくるんだけどなあ」
とかなんとか話をしながら次に訪れたのは鍛冶場に併設された鍛治師組合の店舗。流石、火事場に併設されているだけあって店舗内まで鍛冶場の熱気に包まれている。なんていうことは無くて、他の組合と少し趣の異なる石造りと煉瓦造りを融合したような造りをしていた。
遠目には目立たない程度に柱に彫刻が彫られていた。
近づいてみるとかなり精緻な彫刻がされていて、それだけを眺めていても飽きることは無さそうだ。
重厚な扉を押し開けて鍛治師組合内に入ると探索者組合と違って窓口には利用者はいない。併設された店舗側では若いドワーフの男性が包丁を求めてやって来た主婦の対応をしているところだった。
「勝手に見せてもらう?」
「ん」
「そうね」
「うん」
さて、展示された武器、防具を眺めているのだけどピンとくる物がない。
眺めているうちに俺の注意は大きめの深底の鍋に向いた。
「底面もフラット、
夢が膨らむなあ…… この鍋、揚げ物するのに良さそうだな。
真剣に鍋を睨んでいるとグッと肩を掴まれた。
「
そこではエイシャと
「凄いな……」
素直にそう言葉が漏れた。力みの無い構えからスッと振られた刃長四十センチ程度の剣はブレることなく綺麗な線を描き、そのまま跳ね上がった。
「ふぅ、もう少し手元に重心が欲しいかなぁ」
「いや、凄いなあ」
「えっ、そ、そう…… 私的には、まだまだなんだけど…… ありがと」
「
グリっと音がしそうな勢いで身体の向きを変えられた。
俺が見惚れていると
「いやぁ、良いなあと思って」
「ん、今見るのは、そこじゃ無い」
「
どこを見ていたかは想像にまかせる。とりあえず本題に移る。
「
「そう、使ってみたかったんだ」
そう言って
ゆったり、時には速く、止める時には力み無くスッと止まる。何処にも無駄な力が入っていない流れるような動きだった。
「暫くの間、剣を振ってなかったのに覚えてるもんだねぇ」
「リイサ、凄い」
「いや、ホントにすごいな。俺が最後に見たのって小学校の頃だったもんな」
「んふっ、ありがと。私、コレにする」
それは俺には真似できそうに無い芸当だ。
そして俺の武器としてエイシャと一緒に
「
「いや、長剣はちょっと」
「え〜、木刀くらいの長さの方が馴染むんじゃないの?」
「それは小学校の頃だろ。俺が
「それでも身体に馴染んだ長さがいいんじゃないの? 案外、身についてるものでしょ」
中二の時に戻ってきた俺は改めて教えを乞うことをしなかった。だから馴染んだ長さと言われても実感が無い。
それでも勧められるままに手にした長剣はやはり違和感があった。
だから購入は保留。そのうち良いものに巡り会えるだろう。たぶん……
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