第89話 わからない
※優愛視点の話になります
プルルル、プルルル、
日曜日の昼過ぎ突然スマホが鳴った
友達とは電話をすることがほとんどないので不思議に思いスマホを開き確認する
里中唯
そう登録されてある名前に一瞬困惑したがすぐに
思い出した
「はい、もしもし」
急ぎの用事だろうか、
そう思い電話に出る
「もしもし、優愛ちゃん、聞いてほしいことがあって電話したんだけど、今大丈夫?」
少し暗いような声の里中さんが電話に出た
「大丈夫ですよ、どうかしたんですか?」
「それが、純平くんが今入院してて、」
里中さんのその発言に少し言葉を失った
どうしたんだろう、
事故にでもあったのかな、
捻挫よりも酷かったのかな、
でも、捻挫って言ってたよね、
一瞬にして頭の中に色々なことが浮かんだ
「なにかあったんですか?」
酷いことになってなければいいな
そんな思いを胸に里中さんに聞いてみる
「私が後先考えず行動したせいで純平くんに無理させちゃって、それで、」
電話越しの里中さんはどんどん言葉が小さくなっていて
それに比例するように泣きそうな声になっていった
「えっと、私は何をすれば、」
自分が話を広げようとしたせいで里中さんが泣きそうになっているのがわかった
このままだと話が進まないと思ったので
心のなかでごめんなさいと思いながら話の方向転換をした
「端的に言うとお見舞いに来てほしいんだ
1日の検査入院なんだけどね、」
里中さんと純平の関係は私にも嫌というほどわかる
二人はお互いに好き同士なのだろう、
なのにわざわざそこに私を入れる理由が分からなかった
「どうして私に?」
少し嫌な言い方になってしまったけど、
本題を聞くにはこうするしかなかった
「それはね、私が、優愛ちゃんを応援してるからだよ、頑張ってね、」
さっきまでは感情がわかりやすい声だったのに
急に仮面をつけられたように感情がなくなった
いや、私には計り知れないほどの感情がこの言葉には含まれていたのかもしれない
それぐらいその言葉を聞いた私は怖くなった
「わかりました、なにか持っていくものとかはありますか?」
それ以上今は理由に追求してはいけないと思い
受け入れた
「行ってくれるの?ありがとう!
えっとね、持ち物は、」
そこから里中さんは持っていったら純平が喜ぶものについて教えてくれた
今度は感情が溢れ出しているような声になった
里中さんは急にわからないことを言い出した
頭で言葉の意味を理解できても心が理解できないような感じだった
電話を切ると私は準備を始めた
私の頭の中はなんで私なのだろう、
ということがぐるぐるしていた
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