第70話 お風呂


「姉さんの料理美味しかったよ」


「そうねぇ〜料理上手になったわねぇ〜」


「唯さん、今日も美味しかったです」


「里中さんの料理とても美味しかった、です」


みんなそれぞれに唯さんの料理を褒めた


「ありがと、」


唯さんは照れくさそうに笑った

俺はその光景を見ながら一つ考え事をしていた

それは……

お風呂どうするか問題だ

普通は熱が出ているときや怪我をしているときは入らずタオルで体を拭くと思う

だけど、できれば入りたい

タオルには限界がある

湯船に入ってぼ~っとしたい


「純平くん、どうかしたの?考え事?」


「あー、いやぁ〜なんでもないです」


この状態でお風呂に入るとすると必ず誰かの迷惑になってしまう、なので今回は諦めよう


♪〜♪お風呂が沸きました


軽やかなメロディーと共にお風呂が沸いたことを

機械が伝える


「そういやさ、桜井って今日どうすんの?」


「?」


なんのことだか分からず首をかしげる


「いや、お風呂だよお風呂、何ならあたしが手伝ってやろうか?」


「あらいいわねぇ、私も手伝うわ〜」


芽依さんの発言に麻衣さんも乗ってくる


「純平くんは私がお風呂に入れます」


どう返答すればよいか迷っていると隣から唯さんも混ざってきた


「えっと、今日はお風呂いいかな〜みたいな?」


場の空気にやられて返答が曖昧になってしまう


「ほら、行こう!」


そんな返答を聞いていなかったかのように唯さんはまた軽々と俺をお姫様抱っこすると脱衣所まで連れてきてしまった


「えっと、服、脱げる?もし、あれなら手伝おうか?」


唯さんが恥ずかしそうに聞いてくる


「大丈夫、です」


流石にそこまでしてもらったら恥ずかしすぎて死んでしまうので自分でやる


「じゃあ向こう向いてるね」


唯さんは少し残念そうな顔をして反対側を向いた


するっ

ひゅるっ

ばさっ


脱衣所の中で俺の服が擦れる音のみが響く

どうにか服を脱ぎ終わり見えちゃいけない部分にはタオルを巻いた


「準備できました」


少し気恥ずかしくなりながら唯さんを呼ぶ


唯さんは俺を軽々と持ち上げて浴室に入った


「自分で洗える?」


「はい、それは大丈夫です、ありがとうございます」


「そっか、じゃあなんかあったら呼んでね」


「はい」


唯さんは俺を浴室のイスに座らせると浴室を跡にした


座っていると片足が使えないことはあまり気にならなく、難なく体を洗い終えた


手すりに捕まり体を立ちあがらせる

右足を浴槽から出し湯船につかる


「はぁ〜」


湯船につかると間抜けな声が出てしまった

ぼーっと天井を見つめる

何を考えるわけでもないこの時間がすごく好きだった


ガラガラッ


突然浴槽の扉が開いた

びっくりしながらも扉の方を見る


「私も入っていい、かな?」


体にバスタオルを巻いた唯さんが恥ずかしそうにしながら立っていた

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