第三十八話 ペットを飼いました
郷に入っては郷に従え。
というわけではないが、陸は考えを改めた。
澪はやばい。
やばいほどに陸のために尽くしてくれる。
要するに最高の女性だ。
(だけど、今はそれが仇になってる! だって、どうあっても嫌ってくれないで、順応してくるんだからな!)
だがしかし。
それならば順応できないほどの変態を……エッチを顕現させればいい。
(さすがの澪も、俺が付き合いきれないほどの変態ならば、ドン引きして嫌いになるはずだ!)
さてさて。
そうして時は現在——あれから少しのち。
陸はメイド喫茶目指して、人通りの多い大通りを歩いている。
無論、ただ歩いているわけではない。
「陸……う、うち、恥ずかしいっ」
と、聞こえてくるのは陸の斜め後ろを歩く澪の声。
彼女は現在、スク水ランドセルに首輪をつけた変態的な格好をしている。
それだけではない。
そんな澪の首輪からは、犬の散歩に使うリードが伸びているのだが。
「こんな格好で…….陸にリードを持たれて引っ張られて……う、うち、まるでペットみたいだ」
と、恥ずかしそうに言ってくる澪。
作戦通りだ。
順応力が高いとはいえ、澪は元来エッチと変態を毛嫌いする性格。
こういうプレイをさせれば、拒絶反応が出て当然だ。
(早々にこの訳のわからない状況を終わらせるために、俺も更なる一手を打つしかない!)
メイド喫茶に着くまでに終わらせてやる。
陸はそんなことを考えたのち、変態ロールプレイをしながら言う。
「恥ずかしい? お前はペットだろ澪。俺の従順なペットだ。裸で引きまわされないだけ、ありがたいと思えよ」
「っ……り、陸に裸で引きまわされたりしたら、う、うち」
「わかったらさっさと——」
「はぁはぁ……陸、陸ぅ。うち、もっと陸にされたい……陸に酷いことされると、なんだがお臍の下がキュンって……体も、熱く……なって」
「……」
「陸ぅ……うち、陸の従順なペットだ。陸になら何をされてもいい……だから、たくさん虐めて陸専用の雌犬にしてくれ……そうしたらうち、とっても……とっても幸せだ」
「へ……」
変態だぁあああああああああああああああ!
澪さんやばすぎる。
あらゆる面で陸の想定を上回っている。
なんか今日。
陸がすることは全て、マジでぜーんぶ裏目に出ている気が——。
「陸……うち、勘違いしてた」
と、陸の思考を裂くように聞こえてくる澪の声。
彼女は胸のあたりで両手を重ね、恋する乙女全開といったピンク色の表情で言ってくる。
「エッチなことも……変態なことも。心を許した相手とするなら……キスと同じくらいロマンチックで、神聖なものに変わるんだ!」
「つ、つまり今してるこれはキスだと?」
「っ……な、何言ってるんだ!? あ、うぅ……で、でもそう、なのか? うち……うちって今、陸とキスして——っ」
「いや、澪が言ったんだよ!?」
「えへへ……そっか。うち、陸とキスしちゃったのか♪」
と、はにかんだ笑顔を浮かべてくる澪。
なるほど。
可愛いやんけ。
もう今すぐ抱きしめて、陸の方から告白したいレベルで可愛い。
(ダメだ! 一時の感情に流されるな!)
陸は告白されたら心臓爆発する。
死ぬのだ。
そんな状態で澪と付き合えば、お互い不幸になるのは目に見えている。
やはりなんとしても嫌われなければ。
だけど。
「はぁはぁ……陸ぅ、次はうちにどんな酷いこと……してくれるん、だ? うち、陸にたくさん調教してもらって…….うちのこと、陸に……たくさん使って欲しいんだ♪」
と、そんなことを言ってくる澪。
はたしてこのデートの中で進化した澪を、なんとかすることはできるのだろうか。
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