第24話 逆利用
……何がどうなっている?
エルフの大賢者は、自らの庵に戻り試案を重ねていた。
第八皇子を守ると、自らに挑んできたアレキアは生前の強さも優しさも捨ててはいなかった。自分との闘いでも戦力差を十分理解したうえで、彼女は迷うことなくシャルロッテを守り、切りかかってくる姿は民や人を守る騎士そのものであり、瞳の中の闘志も消えてはいない。
守るもののために命を尽くす純潔な騎士そのものだったのだ。
とてもではないが魔族に屈して闇に染まり意に添わぬ服従をさせられているように見えない。
何故第八皇子に従っている?
第一皇女もアレキアも自らを殺した第八皇子の元で英霊化などした?第八皇子の目的は彼女達が納得できる崇高な目的だということか?
それにあの男の言葉も気になる。
==チートだ何故そんなことが出来る==
そう、何故私はこんな事が出来る?考えもしなかった。そう自分はあり得ない事をしている。属性の違う魔法を一斉に放出が出来るのは神くらいだ。
何故私はこんな事が出来ている?
何故座標を認識した場所に瞬間的に移動できるようになっている?
過去を振り返ればこの力を使っていれば窮地にならなかったのに、私は使っていない。
そう、ある時から急に使えるようになっている。
大体属性違いの魔法連射や瞬間移動など体に負荷の高い魔法を使えば魔力回路が乱れ、体に負荷が高すぎる。それなのに何故自分は躊躇なく使った?
後の事を考えることもなく、使えて当然とばかりになぜあのような高度な魔法を連発した?
おかしい。私は何を見落としている?
「……っ!!」
急に襲ってきた頭の痛みに頭を抑える。
「がはっ!!!」
血を吐き出し、エルフの大賢者はその場にうずくまった。
(やはり負荷が高すぎた……)
「大賢者様大丈夫ですか!?」
弟子の心配する声を聴きながら、大賢者は気を失った。
★★★
『前は大賢者に遅れとった。でも、一度マスター権限を得たというのなら逆にカルナ利用する』
ふんむーっと手を組みながらカルナが俺に宣言した。
「逆に利用?そんなことができるのか?」
『こちらの権限をもっているということはエルフの大賢者にこちらから干渉可能。あちらが干渉できないように超超超ガードしたあと、エルフの大賢者が倒した魔族の魂をこちらに転送するように設定する』
「凄いなそんなことができるのか?」
俺がカルナの開いた青いウィンドウをみるとプログラムのソースコードがずらずら並んでる。
『エルフの大賢者が魔族倒したおかげで迷宮レベル上がった。今のレベルならできる。ここにいるみんなもこの設定できる。みんな外で倒した対象の魂をここに飛ぶように設定しておく』
カルナが褒めてと言わんばかりに俺をみるので、「おお、すごいな」とそのまま頭を撫でてやる。そうすると嬉しそうに顔を赤らめて「そうでもない」とツンデレを発揮した。ここらへんはやっぱり子供なんだと認識する。
『でもさすがにエルフの大賢者の意思やスキルや魔法に干渉は無理。でも、いる位置も把握可能。ある意味まえより行動がわかりやすくなった』
「スキルや魔法に干渉はできないのか?」
俺が画面をのぞき込みながら言う。
「エルフの大賢者のあの離れ技は迷宮の権限でプログラムを書き直したことによる作用だとおもっていたんだが」
『それは無理。迷宮そんな権限ない。権限があるのは迷宮の権限とそれに付属するもののみ。迷宮に魂を送るというコードは加えられるけど、魔法やスキルに関するコードは加えられない。確かに神より創造主に近い場所だけど無制限じゃない』
「だが、それはカルナの知識でだよな?」
『そう、私の知識』
「エルフの大賢者がプログラムを理解して書き換えていたとかありえるよな」
『でもいくら迷宮でも創造主の領域までアクセスできない』
俺がカルナのいじっていた画面をいじると、ぶーっとエラー音が聞こえて画面が閉じる。
ちっ、俺がいじるのは無理か。
カルナにソースを書き直させようとさせたが権限がないということで画面すらひらけなかった。あとでどこまでなら干渉可能か徹底的に研究する必要がある。
「エルフの大賢者はどうやったかは知らんが、過去の歴史では神の領域までアクセスした。そこまで出来ていたのに、大賢者は歴史を変えられず、ループしたってことか。なぁ、いっそのことエルフの大賢者を殺して英霊化させて、記憶を聞いてからまたループするってのは無しなのか?」
俺の問いにカルナはうーんと考える。
『たぶん次のループは『レイゼル』の魂が持たないと思う。それにマスターの存在が謎。次も必ずマスターもループするとは限らない』
「だよな。大賢者が記憶を思い出した時点で神にも筒抜けになるわけだから、この時間軸がダメになるわけだしなぁ」
俺がぽちぽちとステータス画面をいじっていると
「マスター出来ました!」
アレキアが嬉しそうに紙をもってきた。
「私の覚えている限りの巻き戻ったタイミングです!」
「おう、さんきゅー!」
受け取る俺。とりあえずどのタイミングで巻き戻っているか確認は重要だ。
そして俺はアレキアから受け取った紙を見て思う。
女の子(?)らしくカワイイイラスト付きで説明が書いてあるのだが、絵はものすごくうまいのになぜか文字が達筆すぎて読めない。もしやディラン語だろうか?
いや、ディランも帝国も古来から使われてる言語で共通のはずなんだが。
「何かわかりましたかマスター!?」
アレキアがわくわくした顔で聞いてくるので俺は笑う。
「おう!アレキアは絵がうまいという事だけはわかった!」
「では私と一緒に作成しましょう。別々に生き残った時間軸もありますから」
シャルロッテがアレキアの書いた紙を受け取って苦笑いを浮かべた。
「みな私の文字が読めていたので、下手だとは知りませんでした」
顔を真っ赤にしてアレキアが言う。
アレキアの周りの人達はアレキアのこの難解な文字を解読していたらしい。
字が下手なら下手と教えてやるのも優しさだと思ったが俺もスルーしたので人の事は言えない事に気づいて「んじゃ頼む」とスルーした。シャルロッテの作成した巻き戻り表を受け取る。
シャルロッテとアレキアの記憶で明確に巻き戻ったのは5回。
『レイゼル』がシャルロッテに相談→アレキアに相談→デネブ(大賢者)に相談という経由をたどっているので、この二人が絡んでいるときは、大賢者が必ずでてくる。
そしてどの時間軸でも魔王は復活していた、エルフの大賢者と『レイゼル』たちが動いて戦争を未然に防ぎ人がほぼ死んでいないにも関わらずなぜか復活しているのだ。
ただ、復活してからまき戻るまでに時間差があり、世界が半壊状態になる戦乱になって魔王を倒そうと英雄VS魔王になってそこで巻き戻る。
そして巻き戻るタイミングがエルフの大賢者が魔王を封印しようとしたその時だ。
「つまりキーはエルフの大賢者が魔王を封印することか?」
俺がぽつりとつぶやくとキルディスも紙を見ながら頷いた。
「確かにそうなりますね。にしても人を殺さなくても魔王様が復活できていたとか魔族としてはいろいろ複雑ですね」と目を細める。
「神が復活させていたのか、もともと魂がなくても復活できたのかは謎だが、結局エルフの大賢者ではこの世界はかえられないってことか」
俺が言うと、キルディスがものすごいジト目で
「マスター凄い嬉しそうですよ」と、突っ込んできた。
「はーっはっはっは!嬉しいに決まっているだろう!あいつが出来なかった事を俺が成し遂げる!!これほど愉快な事があるか!?くっそすました顔で全部知っている顔しやがって、絶対出し抜く!!徹底的に煽ってやる!!!!!」
胸を張って言う俺。
「大事な事なので二回言ってる。根に持つタイプ」お茶を飲みながらカルナ。
「大人げないですね」お茶を注ぎつつキルディス。
「私つく人を違えましたでしょうか?」真剣にシャルロッテに尋ねるアレキア。
「まぁ、これくらい負けん気が強い方が目標を達成できるかもしれませんし」苦笑いで答えるシャルロッテ。
ふ、好きに言うがいい。このような敗北は二度とおこさない。俺は手のひらで皆を転がして世界を救って見せる!!みてろよ大賢者!!絶対出し抜く!!!!
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