第5話 頭のネジ
「というわけで、俺様レイゼルを虐げていた皇子どもを全力で叩き潰す!
自分が一体どうしてこうなったのか、記憶を思い出せないのは何故なのかという問題はそれが片付いてから、ゆっくりと考えよう!」
キルディスが書いてくれた王族の名簿を見ながら俺が菓子をかみ砕く。
「普通自分の記憶の方が大事でしょ!?おかしい。優先順位がおかしいっ!!」
と、キルディス。
「いいかよく考えてみろ。俺の記憶は逃げないが、嫌がらせしてくる連中はいますぐにでも実害を与えてくるかもしれない。殴られる前に殺れ、これが俺の世界の常識!!」
「ああ、そのような殺伐とした世界からきた人だから、頭のねじがどこかおかしいんですね」
俺もさすがに今ほどひどくなかったような気がするんだが、思い出せないのでどうでもいいだろう。問題は先ほどボコ殴りにした第三皇子だ。報復で何かしてくるかもしれない。
「ですが、それならお任せを。主(マスター)。一応これでも魔族ですから。情報の糸はいたるところに張り巡らせています」
「というと?」
キルディスに問うと、キルディスの周りに複数の水晶が浮かび上がり、景色と音声が流れ始める。他の皇子の様子だ。
「うお!?凄いな!?」
「一応どの皇子を取り込もうか吟味はしていましたから。
ある程度帝国の勢力図は把握しております。使い魔の蜘蛛が行ける範囲なら盗視可能です。私からあまり離れられないという縛りはありますが、半径3km以内くらいと思ってください。神聖力の強い神殿や、力のある聖職者が同伴している場合は、術が妨害されて無理ですね。あと皇帝に近づくのは無理です。無理をすると逆探知される可能性があります」
「ふーん。なるほどね。ところで、先ほど第三皇子が俺に暴力を振るってきたのもお前の仕業だったわけか?」
俺がニマニマしながら言うと、キルディスは「うっ」という顔になったあと頷いた。
「そうですよ。第三皇子にぼこぼこにされてどん底に堕としたあと、懐柔するつもりでしたから。闇のフィールドを用意している間にまさか第三皇子のほうがボコ殴りにされているなんて予想つくわけないじゃないですか。
短時間で別人が身体乗っ取っていたなんて誰が予想つきます!?
それにいじめ自体を誘導したのは自分じゃありませんよ!? 自分が目をつけたときにはもうレイゼル皇子は虐められていたんですから」
泣き顔で抗議してくる。
まぁたしかに短時間で、別の人に身体が乗っ取られていました★は、さすがに俺でも予想できない。虐めの時期についても嘘は言っていないだろう。
ゲーム上のイベントシーンでもキルディスがレイゼルに目をつけたのは一年前だった。
「まぁ、それもそうだ。実際ゲームではレイゼルの闇落ちに成功しているんだから、発想は悪くなかったな。にしても」
俺は第三皇子の映っている水晶に視線を向ける。どうやら俺に負けたのがよほど悔しかったらしく、ご丁寧に俺に濡れ衣を着せる相談をしていた。
帝国の戦勝会で皇族一同あつまる祝いの席で、第五皇子の飲み物に毒を交ぜて、それを俺のせいにするらしい。毒でライバルの第五皇子を殺し、第八皇子の俺に濡れ衣をきせる相談だ。
「これはまた、面白くなってきたな」
「どうします?彼らの策にはまった場合確実に極刑です。今の帝国で厳選な調査など期待しても無駄ですよ。歴史を把握しているなら貴方もご存じかと思いますが、トップである皇帝が腐ってますからね」
キルディスが後ろで手を組んで言う。
「何。相手が陥れようとしてくるなら、それを逆利用して陥れるまで。俺には裏ボスのスキルがあるんだからな」
そう言って俺はにまぁっと笑う。
レイゼルを虐げていたのは第一皇女以外の皇子。第二~第七まで。
真っ先に陥れるのは俺に陰湿な嫌がらせと暴力をしてきた屑、第三皇子だ。こいつに至ってはゲーム上でも悪逆非道の屑行為しかしてないので殺しても問題ないだろう。最終的には柄でもないが魔王を倒して世界を救わなければいけないんだ。
でないと俺が楽しく遊んでくらせない。
最終目的のために全員徹底的に利用して貶める。
「よし、今後の計画は大体きまった」
「どのような計画で?」
「世界を救いつつ、大っ嫌いな奴らを徹底的に利用して貶めたあげく最後には全員オーバーキル!!全員這いつくばって泣きつわめきながら地獄に堕ちてもらう大作戦!」
俺が腕を組みながら言うと、キルディスがしばらく俺を見つめた後。
「最初の言葉と後半の言葉の落差ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
と、全力で突っ込んでくるのだった。
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