第3話 テララッタッターン!!!

 テララッタッターン!!!


 盛大な音をたて、スロットが3つ7を刻むと、派手に花吹雪が舞い無数の一角ラビットが召喚された。


 このスキルはフィーバーすると大量にモンスターが召喚される裏ボスの技だ。レベルに応じて召喚されるモンスターが違うのでレベル20の俺ではこれが精いっぱいだろう。だが問題はその数だ。


 無数のラビットがギルディスに向かっていく。


「たかがウサギ如きでなんとかなると思わないことですね!」


 ギルディスがウサギを容赦なく切り刻んでいくが……。


「がはっ!!!」


 ウサギを切ったはずのギルディスの腕がちぎれた。


「な!?」


 これこそ裏ボスの初期のバグ技。召喚したモンスターにマリオネットのスキルを施すと、モンスター 一匹一匹に見えない糸が裏ボス(俺)とモンスターでつながれる。

 まるで運命の赤い糸のごとく。

 これが厄介なのはこの糸、決して絡まらない、裏ボスは切れないうえに絡まらないくせに、なぜか敵(プレイヤー)に当たると容赦なく切断してくるのだ。


「見えない糸か!!」


 糸に気づいたギルディスが吠えた。

 すぐさま腕を魔族の再生能力で再生しだす。


「糸でつながれて言うのなら、その根本を断つまで!!!」


 ウサギに追いつかれないように後ろに飛びながら、キルディスがそれを発動した。


 キルディス固有秘儀【連なる憎悪の波動】


 このゲーム、技や魔法の他に、個人個人に秘儀が割り当てらえている。

 キルディスは指定した種族のみに大ダメージを与える全体攻撃。

 種族指定なので、種族がまばらだと、ダメージが限られてしまうが、プレイヤー側に同じ種族が揃っている時は攻撃力が高く適正レベルだと全滅すらありえる。そのためギルディス攻略の際は、別種族でパーティー編成していくのがプレイヤーの間で常識だった。


 ……というか話がそれた。


 このキルディスの技は前述した通り、対策をしなければいけないほど、ダメージがでかい。それをウサギに使ったのだ。オーバーキルで死んでいくウサギたち。一応俺は闇の紋章で操るために殺さない配慮からのこの技のチョイスなのだろう。だが、それが甘い。ダメージのでかい技は放った後硬直時間が生じるのがVRMMOの対人の基本。


 俺が召喚したウサギが黒い炎で焼かれたその瞬間。スキル発動後の硬直に陥ったキルディスの顔をわしづかみにしてやった。


「な!?」


 驚くキルディス。レベル80差では俺の攻撃でのダメージは微々たるものだろう。

 ダメージが少ない分、数を当てればなんとかなるが、正直面倒だ。

 俺は裏ボス。チートスキルもちなのでダメージが確実に与えられる技がある。


「貴様何をするつも……っ!!」


 言いかけたキルディスに顔を近づけて俺は満面の笑みで言ってやった。


「自爆ぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」


 俺のスキル【すべての終焉】がさく裂するのだった。


 ★★★


「ありえなぁぁぁぁぁぁい!!!」


 俺の部屋で、執事風のスーツに黒髪と人間の姿になったキルディスが床をバンバンと叩いた。


「はーはっはっは!!!どうだ騙して悪堕ちさせようとした人間に逆に戦闘で負けて屈服させられて奴隷紋を刻まれた感想は!!!」


 俺が腕を組んでいドヤ顔で言うとキルディスが、俺を無言で見つめたあと。


「しかもこいつ性格最悪うぅぅぅぅぅ!!」と泣きながらバンバンと床を叩く。


 そう、あの後。俺の命をかけた自爆攻撃で、キルディスはあえなく敗北した。

 ちなみに俺はガッツスキル(死んでも復活できるスキル)があるので一回の自爆くらいなんてことはない。ただ思ったより痛かった。


 できればもう使いたくはない。


 裏ボスのスキルの自爆はレベル無効で相手を死に追いやれる。

 相手に直接触れた状態じゃないと発動しないという制限はあるもののの、接近する事さえできれば俺の勝利確定なのである。

 ここは裏ボス特権といっていいだろう。

 キルディスはというと自らの展開したフィールドなのでそのフィールド内なら一度だけ復活できるのだが……身体復元中、裏ボスのスキル奴隷契約の紋章を、丸出しだった心臓に刻んでやったのである。


 そのためキルディスは俺の命令を逆らう事ができなくなった。俺の忠実な部下に勝手にさせられたのだ。


「やっぱり私は駄目なんだ。中途半端な半魔だから、人間に服従させられるなんて間抜けな事に……うわぁぁぁぁぁん」

 

 一人で泣き崩れている、キルディスの横で俺はステータスを開いた。

 キルディスを倒したおかげでレベルは40まであがった。100レべを倒してこれかとも思うが、苦労なく倒せたわりにはいい感じだ。このゲーム、俺がプレイしていたころのカンスト(最高)レベルは120。そして魔王は120。魔族は100代が多い。


「なんとかレベル100くらいにはしたいな」


 俺がぽつりとつぶやくと


「この青いものはなんですか?」


 と、キルディスがひょっこり覗き込んできた。


「なんだお前にも見えるのか」

「ええ、初めて見ますが」

「って事は、ステータス画面はこの世界の住人には見えないってことか?」


 俺がステータス画面をぽんぽん叩きながら聞く。


「この世界の住人って……貴方だって人間の皇子ってだけで、この世界の人間じゃないですか。って、よく考えたら人間ごときがあんなに強いわけありませんよね?貴方何者です?」


 言いながらキルディスが俺を薄目になって見つめてきた。


「いいだろう。教えてやろう!!」


 俺がバッと立ち上がると、キルディスがごくりと息を呑む。


「正直俺にもいま自分の状態がよくわらかんっっっっ!!!」


 俺がばーんっと胸を張って言うと


「やっぱりこの人の奴隷いやだぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 キルディスは泣き崩れるのだった。

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