最強裏ボスに転生したので、世界の滅亡を防ぐために悪役を演じる事にした~ゲーム知識と最強スキル、英雄召喚、チート能力【迷宮の主の権限】を駆使して世界を騙せ~【カクヨム版】
てんてんどんどん
第1話 やられたらやり返す
「助けて」
声が聞こえた。
酷く悲痛な声。そこにいたのは小学生低学年くらいの黒髪の男児。
助ける?どこか痛いのか?
俺が聞くとは男児は泣きながら頷いた。
事故か? 虐めか? 警察と救急車を両方呼ばないと。
俺がそう言うと、男児は首を横に振る。
そこまでひどくはないのだろうか?
仕方ないので俺はその子に手を差し出した。
途端景色が変わり、また別の場所から声が聞こえた。
そちらに視線を向けると、どこか漫画にでてきそうな西洋ファンタジー風の建物の中で漫画の貴族が着ていそうな、見かけ重視の煌びやかな衣装姿のガキたちが喧嘩をしているところだった。
がんっ!!!
高校生くらいの男子が蹴られて廊下に転がる。黒髪の気の弱そうな男子……大きくはなっているがさっき泣いていた男児だ。
「まったく平民の血の入ったやつがなんでこんな所歩いているんだよ」
同じく金髪で気の強そうな同じくらいのガキが、蹴られて転がった男児の頭を踏みながらせせら笑う。
「すみません、不注意でした、すみません」
蹴られて腫れた頬を手で覆いながら謝る男児。
「下賤の身が!!王宮をわが物顔で歩いてるんじゃねーよ!!」
再び顔を蹴られて、男子が血を吐いた。
……って!何やってるんだ。ここまでくるといじめの範疇じゃないだろ!暴行事件だ!俺がむかついてその青年のそばにいた護衛騎士みたいな二人の大人に目を向けるとその護衛騎士たちもにやにやしているだけ。
こいつら、アホか!?
目の前で暴行事件がおこってるのに黙って見てるとかあるかよ!?
俺が暴力ふるっているクソガキを止めようとするが……そもそも俺に身体がない。
なんといっていいのかわからないが、意識だけそこにいる状態なのだ。
「お前みたいなクズは死んでしまえばいんだっ!!」
クソガキが再び男の子を蹴ろうとした瞬間。
俺の中で何かがはじける。
そして、次の瞬間、いつの間にか虐められていた方の男児の身体に入っていた俺は、その生意気な糞ガキに見事なまでの右ストレートを食らわせていた。
「なっ!?」
周りに静寂が走る。
そこで俺は唐突に理解した。
ここは俺がプレイしていたVRMMOのゲームの世界。この体は虐められて闇落ち、魔族に操られて人類を虐殺し魔王を復活させる皇子。そして魔王をも恨み裏ボス化し魔王すら凌ぐ力を手に入れるも、魔王に邪魔だと異次元に飛ばされてしまう裏ボス。その裏ボスの闇落ちする前の青年時代だ。
そしてなぜか俺はその体の中にはいってしまった。
身体の持ち主の記憶すら内包しながら、俺はその裏ボスの青年時代と一体化してしまったのだ。たぶん身体だけでなく記憶や感情すらも。
何がどうなっているのか綺麗さっぱり理解できないはずなのに、なぜかそれだけは一瞬で理解できた。いや無理やり脳に送りつけられたとでもいうのか?よくわからない感覚。
だが、一つだけ確かな事がある。
俺の流儀はやられたら、やり返せ!!!
こいつらを地の底まで突き落としてくれる!!!!
「なっ!? 貴様第三皇子に何をする!?」
殴り掛かってきた第三護衛騎士の攻撃を俺はすんでで躱す。
護衛騎士のレベル50。対して俺のレベルは20。
こんなレベル差があるのに大の大人が二人が子どもに殴り掛かってくるとかマジ何考えてるんだと思いつつ、俺はそれを発動した。
裏ボスのバフ『走者の楔』
このバフは裏ボスの素早さをバフで二倍にし、逆に敵対する勇者パーティーの素早さデバフで三分の一にしてしまう。
戦闘中5分だけ一つのステタースだけ効力を発揮する。クールダウンは6分。
効果は5分なのでクールダウン中の一分さえ乗り切れば、延々と使い続けられる便利な能力だ。他にも力や魔力のバフもあり、使えるバフは一つだけなので、とりあえず素早さのみを下げさせてもらった。
敵の時は疎ましいスキルだったが自分で使えるとなると、かなりありがたい。
糞皇子一行はこれで素早さが極端にさがったはず。
これでレベル差による素早さの問題はクリアされた。
このゲームステータスのそれほど数値上がらないのが幸いする。
俺のステータス二倍で相手は三分の一ならむしろ素早さだけなら俺の方が上。
俺は護衛の攻撃を軽く躱すと全力で顔をぶん殴った。
護衛はそのまま地面に吹っ飛ぶ。
どうやら体の動かし方や感覚はVRMMOの時と同じらしい。
腕力が極貧なので大したダメージにはならないが、この護衛を殺したいわけじゃないので問題ない。むしろダメージ小で衝撃だけなのはありがたいだろう。
そう、ダメージが弱い分何度でも殴ることが出来、痛ぶれる。
あらゆる職の対人も極めた廃ゲーマーたる俺に勝とうなど5000億年はやい。
「お前!!何をしたのかわかっているのか!?」
反撃されると思っていなかったのか俺に殴られた頬を抑えながら第三皇子が叫んでくる。
「ああ、わかってるぜ。第三皇子様、そりゃもう、よーくな」
そう言って俺はにまぁっと笑った。
母親の身分の差を盾に俺ことレイゼルに好き勝手やった分の行いを全部味わってもらおうじゃないか。悪いが俺はレイゼルほどいい子ちゃんじゃない。
とことん地獄を見せてやる!
俺なそのままもう一回、第三皇子をぶん殴った。
「ひぃ!!やめてくれ!!俺が悪かった!!!」
ボコ殴りにされて意識を失った護衛に縋り付きながら第三皇子が悲鳴をあげた。
すでに全力でボコ殴りにしたので護衛二人はノックダウンし、第三皇子は俺に思う存分ボコられている。
いままでレイゼルが反撃できないのをいいことにもっとひどい暴力をふるっていたくせによく言うという、怒りが込みあがってくる。
こいつら本当にレイゼルを半殺しにしたことが一度や二度ではないのだ。
そのたびに神官が治していた。母の身分が低く、後ろ盾がないレイゼルはただ我慢するしかなかった。それを考えたらこれくらいの暴力、暴力のうちにもはいらない。
「へぇ、悪いと認めるのか。お前みたいな糞野郎でも罪悪感とかあるんだな」
俺がニマニマしながら言うと、「なにぉ!!」と第三皇子が食って掛かろうとしてくるので顔面蹴とばしてやる。ごふっと嫌な音をたてて第三皇子が倒れた。
「やっぱり悪いなんて思ってもいなかったな」
俺がもう一度ぶん殴ろうとしたとき、気配を感じて俺は顔をあげた。
そうー-誰かがこちらに向かっている気配を感じたのだ。
「運がいいな。それじゃあそろそろ許してやるよ」
俺はそう言って、ボコ殴りにした第三皇子と護衛に回復魔法をかけてやる。
とたん、傷口もダメージもきれいさっぱり消え失せる。
裏ボスのスキル『絶対回復』すべてのダメージを瞬時に回復する。
「き、傷が消えた?」
驚く護衛。
「お、覚えてろよ!!」
指をさしていう第三皇子。
「ああ、覚えていてやるよ。俺にぼこなぐりにされて泣きべそをかいたのをな」
俺が腕を組んでにまにましながら言ってやる。
「こんなことをしてただですむと思っているのか?」
「え? じゃあどうするんだ?
まさか糞弱い第八皇子にぼこなぐりされましたーとでも母親に泣きつくか? それとも父である皇帝陛下か? お前ら自ら恥をさらしてくれるというなら大歓迎だ。第三皇子付きの護衛なのにガキ相手に手も足もでなかった護衛。そして大口をたたいてたのにくそ無様にやられたお前。それを正直に言えるならな。俺は大人さえ素手で圧倒した第八皇子と名が広まるだけだ。なかなか悪くない」
「ぬ、ぐぅぅ」
まるで漫画みたいなセリフを吐きながら第三皇子が拳を握りしめた。
「どう報告するのか楽しみにしてるぜ。 護衛とはぐれたところをボコ殴りにされたと報告して、護衛が首になってもよし。
不意打ちをつかれてボコ殴りにされたと訴えてもよし。
だが俺がお前たちの怪我が完治してしまった以上、証拠は皆無。例え怪我を治したのがばれたとしても、俺は怪我を完治させることのできる有能な第八皇子様ということになる。お前らがどんな嘘を並べ立てどんな報告をしようとも、俺は受けてたってやろう。こっちは最初から評価最低だ!これ以上失うものなんてないっ!確実にお前らに大恥をかかせてやるっ!」
俺の言葉に護衛が真っ青になり第三皇子が歯ぎしりした。
ああ、いいねぇ屈辱にゆがんだ表情。
性格の悪いやつをねじ伏せ、言い負かす。この時の高揚感がたまらない。ああ、もちろん大好物だ。
「きさまぁ!!」
大事な事なのか二度同じセリフを言った第三王子に俺は鼻で笑って一番むかつくであろう斜め横の角度で見下ろして、
「せいぜい好きなように報告するんだな。だが、これだけは言っておく。最後に笑うのはこの俺だ。せいぜいママンに情けなく泣きついてこいや!」
思いっきり啖呵をきってやるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。