ファミレス店長を襲う恐怖
らんた
ファミレス店長を襲う恐怖
「またこの時期か」
店長たちは嘆いた。ここは静岡県の巨大遊園地「アルプスランド」の近所にある、ファミレス群。もちろんアルプスランドの帰りに寄っていただくために設置された店舗群である。
昔はロック歌手などの特別ステージでそういうことはなかった。しかしここ10年異変が起きていた。
バーチャルアイドルと称したキャラのライブをアルプスランドの巨大会場で行うようになったのだ。ファンはなぜか知らないがレーザーポインターを持って踊るのだ。そこはいい。問題はライブが終わった後ファミレス内で別の客にレーザー光線を当てる客がいることだ! 1秒以上眼球にレーザーを当てると網膜に火傷を負い、視力が1.0から0.1以下になるという恐るべき行為であることを彼らは自覚してないのだ!!
「お客様、おやめください!!」
なんと犯人は中年の男性である。
「なんだと、僕は客だ!! 客が何やろうと自由だ!」
こうして警察沙汰になる事件が多発。この客は傷害罪で現行犯逮捕となった。
衰退坂44(44人というメンバーだけでなく44とは「死・至」という意味が含まれる)というユニットのコンサートに至っては、無断で車をファミレスの駐車場に停めた。おかげで客はガラガラなのに駐車場だけ満車になったのだ。売り上げが命の店長にとって、これは死刑宣告に等しい。アルプスランドにはもちろん巨大有料駐車場が併設されているにも関わらず、だ! つまりアイドルファンらは駐車場料金をケチるために、こんな迷惑行為を行っているのだ!!
ブチ切れた和食レストラン「そう」(店名には"so good"と惣の意味が含まれる)の店長は「大変すばらしい 民度の低いアイドルグループですね お里が知れますね 次はレッカー車で移動させます」という警告の張り紙を出した。すると……あっというまにSNSでこの警告張り紙の情報が拡散され、翌日、口コミサイトに怒涛の最低評価と苦情の電話が和食レストラン「そう」本部に殺到することとなった。なんと店長は即日懲戒解雇となった。
握手券アイドルとはアイドルという名の新興宗教団体である。既存の宗教が壊れ、あるいはカルト宗教しか残ってない今、日本人は「宗教」には見えない宗教にすがり「萌え~」と連呼していた。もちろん人の迷惑などお構いなしだ。
握手券入りCDを大人買いして捨てる。握手券だけ抜いて。これはただのお布施だ。
「あいつらはカウム真理教の連中と変わらんよ」
またある日突然ファミレス「ゴスト」("gos"とは「おやっ?すごい!」という意味の英語。つまり"gos't"という意味だ)にカメラを持った小太りの中年男が殺到した。なんでもアニメ作品で美少女アイドルグループが帰りに寄ったファミレスという設定になってるのがここなんだそうな。中年男らは聖地巡礼と称してコーヒー1杯で4時間以上も粘りながら「~ちゃん、萌え~!」と奇声を発する。店内はそういった客で満席となった。
もちろんゴストは閉店となった。
この国は、40歳を超えても精神年齢が小学生のままで止まった恐るべき大人で満ちている。そこでファミレスの店長は、この「アルプスランド」内にある本格お化け屋敷「ゾンビハザード」にちなんで「リアルゾンビハザード」と名付けた。彼らは脳が死んでるので「ゾンビ」と名付ける事としたのだ。やがて商店街も結成し、ゾンビについて情報交換も行うこととなった。
「ゾンビが来たぞ~!!」
店長らは他店舗に電話で警告を発する。商売敵のはずなのにだ。今日もアイドルコンサートの日なのだ。
アルプスランドの近所にあるファミレス店長らはこうして小学生のまま大人になった「ゾンビ」と今日も戦うのだ!!
遊園地のお化け屋敷よりもいかに現実の方かホラーか。店長たちはよく知っていた。
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