45色 幼馴染は覚えてる?
クロロンの部屋に案内されたわたしたちはさっそくクロロンの消えた記憶が入ってるかもしれないゲームのカセットを探す。
「場所の目星はついてるんですの?」
フラウムが聞くとクロロンは顎に指を当てながら考える。
「うーん、たぶんだけど、あるんだとしたらここかな?」
そういうとクロロンは部屋のクローゼットを開ける。そして、大きめの箱を取り出して中を確認する。
「ゲーム機やそのカセット類は大体この中に入ってると思うよ」
箱の中の物をひとつひとつ出していく。
「かなり古いゲームばっかりだね」
レータは出されたゲームをみると興味ありげに聞く。
「そうだね、ここにあるゲームのほとんどがみっくんがくれたんだ」
「え?そうなのかい?」
「…ん、もともと家にあってやらなくなったゲームをクウタにあげた。その方がゲームも喜ぶと思って」
「キミもなかなかロマンチックなことをいうね」
「でも、そのおかげでぼくは楽しくゲームができたよ」
クロロンは笑顔でいうと言葉を続ける。
「それに当時最新のゲーム機をもってなくて他の人にあまり仲間に入れてもらえなくて、でも、それでも、楽しかったよ」
クロロンは無理に笑顔を作ってる感じがした。
「…その、すまない」
「え!?いや、違うよ!?ごめん、言い方が悪かったね。ぼくが言いたいのは今はみんなと出会えて楽しく過ごせてるって感謝を言いたいんだ」
その言葉はクロロンの本音で間違いないと感じた。
「ありがとう!わたしもそういってもらえてうれしいよ!」
わたしもなんとなくクロロンにお礼をいう。
「もぉー!さっきからなに!?あなたとクウくんのそのなんかわたしの心がムズムズする会話!」
なぜかモリメさんに嫉妬?のような感情を向けられる。
「まあ、とにかく探しますわよ。モリメさん貴方の仰っていたカセットはどれですの?」
フラウムは並べられたゲーム機をみながらモリメさんに確認する。
「あ、そうだった。確か、10年前に流行ってた持ち運び用のゲームのカセットだよ」
モリメさんはゲーム機のカセットケースを探す。
「10年前に流行ってたゲーム?」
その言葉にクロロンは首をかしげる。
「どうしたの?」
「えっと、なんというか、かんというか、なんだかひっかかって」
「ひっかかるってどんな感じ?」
「なんかよくわからないけどちょっとイヤな感じだね…ねむたいのにねむれない、だけど、ねている、でも、意識はある。みたいな感じ?」
「分かるような分からないような言い方だね」
《恐らくだが、解けかけてる可能性があるな》
「え?」
クロロンの発言にマモが答える。
《生物の記憶は基本必要のないことは忘れるモノだ。だが、突然必要になった時に一度やったことなら記憶がなくても突然と思い出して個によっては出来るモノだ。そのきっかけが掴めそうなんだろう》
クロロンの今の状況の推測をしてくれた。
「じゃあ、カセットがみつかればそれがきっかけになるかもしれないんだね!」
わたしたちは必死に探した。
「あった!」
モリメさんはカセットケースからひとつのカセットをみつけ慎重に取り出す。
「これだよ!わたしがあの時使った思い出のカセットだよ!」
モリメさんはうれしそうにそれを見つめる。
「分かってはいると思いますが、慎重に扱ってくださいね」
「折角見つけたのに踏みつけたりでもしたら笑えないからね」
二人は注意を促す。
「う、うん、クウくん!これ、覚えてる?」
モリメさんはそれをクロロンにみせるとクロロンは懐かしそうに話す。
「うん、覚えてるよ!ぼくがはじめてちゃんとやってゲームにハマったきっかけの今も毎シリーズ買ってるゲームだよ。確か、ハマったきっかけはトモダチがこのシリーズが好きでそれをきっかけにぼくもはじめてそれから毎日その子と一緒に……………あれ?」
途中まで話していたクロロンは突然言葉を切りすこし深刻な顔をする。
「クロロンどうしたの?」
みんなクロロンの反応をみてなにか空気が変わったことに気がつく。
「………ねぇ、みっくんひとつ確認してもいい?」
「…ん」
クロロンはすこし青ざめながらシアンに質問する。
「このゲームってみっくん《やってた》?」
クロロンの質問にシアンは静かに答える。
「…やってない」
「!!?」
シアンの言葉にクロロンは驚愕する。
「…え?…つまり…え?どういうこと?…一緒にやってたのはみっくんじゃない?…なら、だれ?…ぐぅ!!」
クロロンは左手で苦しそうに頭を押さえる。
「クロロン!?」
「緑風さん!?大丈夫ですか!?」
「クウくん!?」
みんな苦しむクロロンを囲うように集まる。
《これはマズイな《記憶を封印するチカラ》と《思い出そうとする本能》が衝突して脳を刺激しあっているな》
状況をみたマモがいう。
「ど、どうしたらいいの!?」
どうしたらいいかわからないわたしは慌ててマモに聞く。
《そうだな、あまりいい方法とは云えないが気絶させるのがいいだろう》
「き、気絶って!」
その言葉を聞いたフラウムが驚く。
《わかっている、強引に気絶はさせない、おい、レータ、カラダを貸せ》
「はあ!?」
突然そんなことをいわれレータは驚く。
《今のワタシの依り代では魔法はあまり使えんし半身に移ったら逆にチカラのコントロールが出来ない。だから、絶妙に魔力と体力の少ないお前しかいないんだ》
「めちゃくちゃ失礼だな!?」
マモの説明にレータは突っかかる。
「マモさんお願いします」
「お願いマモ!」
「おい!?本人がまだ了承していないだろう!?」
「いいからさっさとカラダを貸せですわ!緑風さんを苦しめたいんですの!?」
「キミに云われなくても分かってるよ!マモ早くしたまえ」
《全く…どっちなんだ…》
マモはため息混じりにいうと人形から赤い魂をだしてレータに移す。すると、マモの魂が入ったレータは目が赤くなる。
「…まあ…かなり調子が出ないが仕方ない」
マモは手を握って広げる動作を数回すると右手をクロロンに向け呪文を口にする。
「リープ」
「!?」
魔法をかけられたクロロンはその場で倒れる。
「クロロン!?」
「安心しろ眠らせただけだ」
心配するわたしたちにマモはいう。
「さて、この状況をこいつの族親に見つかっては厄介だ。場所を変えるぞ」
「そうですわね。こんな状況を見られてしまっては緑風さんの御家族に誤解されてしまうかもしれませんわね」
フラウムもそれに賛成みたいだ。
「半身の姉の所に移動するのがいいかもしれないな。構わないか?我が半身?」
「…ん、いいよ」
マモの提案にシアンは首を縦にふる。
「でも、どうやって?クウくんを抱えて持っていくの?」
「いや、ワタシの転移魔法で移動しようと考えているがひとつ問題がある」
「問題?」
「恐らくだが、この人数を転移魔法で移動させると転移した瞬間に魔力切れで強制分離されてこいつの意識が飛んでしまう」
「なら大丈夫ですわね」
「は?」
フラウムの返しにマモはすこし驚く。
「メガネの意識が飛ぶだけなら何の問題にもなりませんわ」
「そうだよね、メガネくんには申し訳ないけど、今はクウくんのために飛んでもらおうか」
モリメさんも賛同する。
「マモノのワタシも同情するぐらい可哀想だな…」
マモはレータのカラダでレータを哀れむ。
「まあいい、おい、半身。そいつを持て、転移先が地面かもしれないからな」
「…ん、わかった」
マモにいわれシアンはクロロンをおんぶする。
「そこまで配慮してくれるんですのね」
「マモってけっこうやさしいね」
わたしたちの言葉にマモは「ふん」と一言だけ返すと転移魔法を使う。
「テレポーテーション」
次の瞬間わたしたちはシーニの研究所にいた。そして、レータのカラダからマモの魂が飛び出て倒れるレータをクロロンをおんぶしているシアンは肩でフラウムは両手で受け止める。
「ええ!?いきなりなに!?」
「ほう、これはなかなか珍しいものを見れたのう」
突然現れたわたしたちをみて二人は驚く。
「すみません、シーニさん二人を寝かせる場所を借りてもいいでしょうか?」
フラウムは真っ先に二人の安全を確認する。
「うん、事情は後から聞くよ」
シーニもただ事ではないことを察して二人を寝かせる場所をつくる。
《キサマラの荷物と履き物もついでに転移させておいたぞ》
マモの言葉にわたしたちの靴もあることに気がつく。
「めちゃくちゃ気が利くのう」
それをみて魔女のおねえさんは感心する。
「なるほど、とりあえずみつけることはできたんだね」
シーニにクロロンの家でのことを伝える。
「でも、この後どうしたらいいか分からなくて…」
「ねえ、もしかしてキミはしってたりする?」
《………》
シーニはマモに聞くけどマモはなにもいわない。
「もし、しってて黙ってるならマコトに報告しちゃおうかなぁ~?」
《チッ…メンドクサクナルことをするな》
シーニがイタズラっぽくいうとマモは口を開く。
《先程もいったが、ワタシは全ての魔法に詳しい訳ではない。だから、今からいうのはあくまでワタシの知識の範囲の情報だがメモリ一族の記憶操作魔法の解除方法は前もいった様に突然解けることもあれば条件付きで解除することができる》
「その条件付きの解除方法を試すんだね」
《ああ、その条件は記憶を入れたメモリーから記憶を本人に移すことだ》
「つまりこのカセットを使えばいいんだね」
モリメさんは手に持っていたカセットをみる。
《お前は解除の呪文を知ってるのか》
「あ…それは…」
呪文がわからないのかモリメさんはうつむいてしまう。
《はぁ…相変わらずメンドクサイ魔法だな》
「どうにかわからないの?」
《そうだな、解除の呪文がわからないなら《無理やり解く》しかないな》
「無理やり?」
《カギをなくした時にカギを壊して無理やり開けるだろ?それと同じで呪文を使わず魔法を解除するんだ》
「そんなことができるの?」
シーニは驚きながら聞く。
「まあ、理論上は可能じゃのう。じゃが、それはかなり魔法に精通していないと難しいがのう」
《キサマは出来ないのか?魔女の一族だろ》
「そう簡単にいいなさるな、もしかしたらおばあちゃんなら簡単に出来るかもしれんが、わたしゃはそんな高度なことやったことないのじゃ」
《やり方はしっているようだな》
「うぐっ…痛いところをおつきなさるな…」
マモに指摘されておねえさんは目を反らす。
「じゃあさ、やり方だけ教えてよ」
「え?」
「やり方が分かればさわたしがちゃちゃっとそれができる機械造るからさ」
困っていたおねえさんにシーニはいう。
《ハア!?ナニをいっている?そんな簡単にそんなモノが造れるものか!》
「それが出来てしまうんじゃがな…」
《ナニ!?》
シーニの発言になんの疑問を持たずに返すおねえさんにマモは驚愕する。
「では、お願いするかのう。さっそくやり方を説明するがいいかのう?」
「オーケイ」
おねえさんはシーニに魔法の説明をはじめるが、わたしはいっていることが難し過ぎて終始目を回していた。そして、説明を聞き終えたシーニは「オーケイ、ちょっとまっててね」というとすこし離れた場所に移動して作業をはじめる。
「おまたせーできたよー」
数十分後シーニは数個の機械を持って戻ってきた。
「これがメモリ解除装置と記憶転移装置だよ」
《マジか…》
シーニの発明をみたマモは唖然とする。
「じゃあさっそく試すけどいいかな?」
「あ、うん!」
モリメさんはシーニにカセットを渡す。
「カセットをこれに入れてこっちをクウタくんの頭に被せるっと」
シーニは機械のセッティングをはじめる。
《これ程までの天才がこの世にいたのか…》
「かなり抜けているところはあるがシーニさんは紛れもなく天才じゃよ」
そんなシーニをみて驚愕しているマモにおねえさんはいう。
「よし、これでオッケイっと、じゃあ、起動するね」
「うん!」
頷くわたしたちを確認するとシーニは機械のスイッチを入れる。すると、カセットの指した機械から魔力の光がしてそこから繋がった電線みたいなモノをつたってクロロンの被ったヘルメットの様なものに流れていく。
しばらくして光が収まるとシーニはクロロンから機械を外す。
「よし、これで完了だと思うよ」
「え?終わったの?」
「うん、後は目覚めるまで待てばいいよ」
意外とあっさりと終わってわたしたちは唖然とする。
そして、クロロンが目覚めるのを待つ。
「…うぅ」
しばらくして唸り声が聞こえてわたしたちは駆け寄る。
「クウくん!?」
「…おや?僕はなぜ寝てたんだい?」
クロロンではなくレータが目を覚ました。
「なんだ…メガネくんか…」
「もう少し寝てていいですわよ」
「なんだい、冷たくないかい?」
「相変わらず扱いが雑いのう」
落胆するモリメさんとフラウムにレータは悲しそうな顔をする。今回ばかりはすこしかわいそうだ。
「大丈夫?レータ」
わたしはレータがかわいそうになったので心配する。
「心配してくれるのはありがたいが、同情する様な目はやめてくれ」
なぜか逆にレータをキズつけてしまったようだ。
またしばらく待つと今度はクロロンから唸り声が聞こえる。
「クロロン!?」
わたしたちは口々にクロロンを呼ぶ。
クロロンは左手で頭を押さえてすこし唸りながらゆっくりと上半身を起こす。
「大丈夫ですか?緑風さん」
「…大丈夫か?」
みんなクロロンに心配の声をかける。
「…クウくん?」
モリメさんはすこし不安のこもった声でいう。
「…!?」
その声を聞いたクロロンはモリメさんをみつめると頬をかきながらいう。
「…あはは…なんでこんな大切なこと《忘れてた》んだろうね」
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