9色 試練の塔と三つの扉
塔の中に入ると壁や床が石で出来た、みたところ円形の広い部屋になっていた。
「人工的に造られた場所でしょうか?コンクリートの様な踏み心地がします」
「どうだろうね、ナニか感じたことのないチカラを感じるね」
マルは床をトントンと足で確認したりシーニは壁を触ったりして部屋の中を調べていく。
「なんだかかわった場所だね、クー」
「ピュルーン」
わたしもクーと一緒に塔の中を探索していく。
(よくぞココまで辿り着きましたね)
「!」
突然頭の中に声が聞こえてきた。
「今のは!?」
マルとシーニも周りを見回す。
「二人も聞こえたの!?」
「ええ」
「なんだかフシギな感覚だね」
(ワタシはクーデリア、人間でいうところの神獣でありアナタ達がクーと呼ぶその子の親です)
「パパなの?ママなの?」
(どちらでもありません)
「開幕早々の質問がそれですか」
「アカリらしいね」
(早速ですが、アナタ達には試練を受けてもらいます)
「いきなりですね」
(安心してください。試練はいたって簡単、アナタ達ひとりひとりに《神獣》と戦ってもらいます)
「聞き間違いでしょうか?」
「もう一度いってもらってもいいかな?」
(安心してください。試練はいたって簡単、アナタ達ひとりひとりに《神獣》と戦ってもらいます)
「ちっとも安心出来ませんね」
「よし、帰ろうか」
(お待ちなさい)
背を向けて帰ろうとする二人を声が止める。
(残念ですがトビラは消えておりますので帰れません)
「……………」
二人はカクカクとした動きで振り返って大量の冷や汗を流して次の瞬間すごい勢いで走りだして壁をものすごく叩きだす。
「あああああああ!!出口はどこじゃあーーーーー!!」
「うああああああ!とりあえずこんな壁ぶっ壊してやるーーーーー!!」
普段の知的な二人はどこへやら…すごい形相である。
(落ち着きなさい)
「ぬおおおおおお!くらえーーーー!」
「魔弾ッ!魔ダン!マダーン!!」
マルは魔法で棒を創ってそれで壁を叩きだしてシーニは杖から魔弾を連発する。
(落ち着いてください)
静止に一切反応しない。
「ぐおおおおおお!砕けろーーーーー!」
「にゅおおおおお!弾けろーーーーー!」
(落ち着いていただけないでしょうか…)
クーデリアの声が引いていた。
「あはははははははは♪」
「イヤッフーーーーー♪」
ワァオ完全にハイになってらー。
(もうそろそろ壁が壊れちゃいそうなのでやめていただけないでしょうか…)
もう泣きごとになっている。
「二人とも!!いいかげんにしてーーーーー!!!」
「!?」
わたしは大声をだしてを二人静止させる。
「二人とも!わたしたちは一体なんのためにココにきたと思ってるの?クーの秘密をしるためでしょ!」
「それは…そうですが」
「アカリの知ってる通り神獣って普通だったら絶対に出会うことの出来ない伝説上の生物だよ、それと戦えなんて」
「弱気な発言になりますが、神獣は魔力が人間では足元に及ばない程の膨大な量とワザを使うといいます。それと、一戦交えるなど無謀というほかありません」
いつもは頼もしい二人がこんな弱気になるなんてやっぱり神獣はそこまですごいんだ…。だけど、わたしはなおさら…。
「ワクワクしてこない!」
「ワクワク?」
「うん!正直わたしも戦えなんて怖いけど逆にこんな機会なかなかないよね?」
二人は静かに話を聞いてくれる。
「アニメやマンガの見過ぎかもしれないけどなんだか《特別に選ばれた》って感じがしてわたしはワクワクが止まらないな!だから、わたしはこの試練受けてみようと思う」
二人はキョトンとわたしをみている。
「何と云うか、いい意味で単純というか何と云うか」
「まあ、アカリらしいの一言に尽きるね」
二人は苦笑する。
「アカリが受けるっていうんだったらわたしも覚悟を決めるよ」
「一人でやらせる訳にもいきませんしね。何よりここでやらなきゃ男が廃ります」
「全員女だけどね」
「二人ともありがとう」
(覚悟が出来たようですね)
クーデリアが先程の威厳に満ちた感じでいってくる。
そして、ヒカリのトビラが三つわたしたちの少し離れた場所に現れた。
(一人一つのトビラに入ってください。その先に試練の相手が待っています)
「ここまで来たらもうドンと来いですね」
「二人とも手をだして」
シーニはわたしとマルの前に掌を下向きにだす。
「ちょっとしたおまじないだよ」
「いいですね。これぞ青春って感じです」
マルはシーニの手の上に自分の手を重ねる。
「わたしもわたしも!」
「ピュルーン♪」
わたしもマルの手の上に自分の手を重ねてその上にクーが乗る。
「わたし無事に帰れたらミズキにいっぱい抱き付こうと思ってるんだ…だから、この試練絶対乗り切ってみせるよ!」
「死亡フラグビンビンじゃないですか」
「よーし!二人とも絶対乗りこえようね!」
わたしたちは「おー!」と声をだして手を離すと背を向けてそれぞれのトビラに入っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます