「ひろしの冒険」エクストリームバージョン

改淀川大新(旧筆名: 淀川 大 )

まえがき

 拙作「ひろしの七罪」、「ひろしの怒り」、「ひろしの呪い」に好評をいただいたので、またまた本作を執筆することとした。お読みいただいた皆様には、心からの感謝を申し上げたい。

 さて、本作はいわゆるファンタジーのジャンルに当たるが、これも筆者にとって初挑戦のジャンルであり、新たな挑戦となる。

 ただ、今回は筆者の前にはすこぶる高い壁がある。なぜなら、私はこれまでにファンタジー小説というものをあまり読んでいない。Web小説の世界に参入してから数作を拝読させてもらった程度である。しかも、私はゲームをやらない。一応、買ってもらったが、中学に上がる前に飽きて、その後に分解してしまった。後のゲーム機器も、ことごとく分解した。中学の頃、買い替えで廃棄するという電子レンジを分解しようとして残留帯電で感電して死にそうになった。同じく中学の頃、自転車を分解しては組み立てて、その自転車で登校していたが、登校中にハンドルがガクンと外れて、そのまま近隣の女子高の登校生の列に突っ込み、皆に避けられてその先の側溝に転落したが、傷と泥だらけで遅刻した理由を告げても先生には信じてもらえなかった。少し話が変わってきたので、戻そう。私は映画は大好きだ。ものすごく好きだ。が、ファンタジー映画は観ない。指輪の物語も魔法学校の生徒くんの話も観ていない。同じく、アニメも大好きで鬼退治青春活劇も巨人型生物兵器の討伐劇も何故だかわざわざ指で引き金を引く巨大ロボットの宇宙戦争物語も観ているが、異世界モノや転生モノは観ない。だから「ろうきん」と言われても、金融機関ですか?と尋ねてしまう。

 なので、まずは各小説投稿サイトのファンタジー部門を覗いてみた。


 なんじゃ、こりゃ。


 世代的にどうしてもジーパン刑事になってしまうが、そこには三行以上に至る長さの題名が並んでいるではないか。長い物になると八行もある。さては、これが噂に聞く「Web小説界の悪しき潮流」か……。

 この「ファンタジー」というジャンルは、一昔前ならばSFに含まれていたのだろうが、今では立派に独立したジャンルとなっており、しかも異世界とも区別されていて、ますますその特色を顕著としている。という事はつまり、パターンが確立しつつあるとも言え、その典型例が「テンプレ」物と言われる体裁の小説だろう。それ故に、個々の作品の特色を際立たせる事が難しい。どれも、どうしても類似の作品となってしまいかねないので、添えるアピール文自体も似通ってしまう。そうなると題名で勝負して他の作品との差別化を図り、読者の選択を誘うしかないのだが、そこで用いられる方法というのが文章体の長い題名というわけだ。なるほど。しかし、それは間違った方法であると思う。

 長い題名は読みにくいし、長すぎると覚えられないので、読者の頭の中に残らないし、結局、次にもう一回読んでみようということはなく、Web小説から書籍化されてもWeb読者からもう一度手に取ってもらえることは少ないと思うからである。まして、出版社側のプロモートが終わった後に、つまり何年も後にもう一度読んでみようという事が読者に起こるのだろうか。もちろん、内容を覚えていて、その作品を探すという読者はいるだろう。しかし、その作業をさせてしまうことは少し不親切ではないか。ともかく、読者の脳内にインデックスとして題名が残らないのであれば、いずれ忘れ去られ、やがて文芸の歴史からも消える。それでいいのであろうか。そもそも、長い題名を書くとほぼ書きなぐりの要約文のようなものだから、書いている側つまり作者も何を書いたか覚えていないのではないか。少なくとも私はそうである。これを書いている時点で本作(のエッセンスバージョンとしてコンテスト用に削って投稿した長文題名の作品「ひろしの冒険(略)」)が正確に何という題名であったか、まったく覚えていない。ということは、物語のテーマも記憶に留まっていない。そういった状況だ。他の作者の方からは反論もあろうが、私はそうなのである。まったく記憶にない状況で、誰が主人公でどんな事を読者に伝えたいのかという事も忘れた状況で書くしかない。そうする。これぞ正にファンタジーであると思う。

 それでは、淀川ワールドのファンタジーをお楽しみください。




 二〇二三年一月某日 淀川よどかわ ひろし


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