決戦! ドラゴン…ドラゴン?⑪

「おっちゃん、それ全部頂戴!」

「ぜ、全部は困る…」

 なんて会話を何点か。銃砲店はシャルルだけでもいくつかあるの。かき集めたけれど全然足りない。そりゃそうね、三百キナって結構な量だから。鉄砲で使う黒色火薬なんて一発三メモンくらいだもの。十万倍かぁ。一人百発の弾丸を持っていたとしても千人の鉄砲部隊になっちゃう。とんでもない数だわ。

「ペルル殿」

「アーノルド、どうだった?」

「芳しくないな」

 べた付く潮の香り。街中じゃ手に入らないから港から直接買い付けようと思って。

「そうなの?」

「出せても十キナが限度とのことだ。取り急ぎ抑えたが、向こうも鉄砲隊に必要とのことでな」

「困ったわね…アタシも十くらいしか集められてない」

「量を減らすしか無いのではないか?」

「代替品なんて…あんた、いい考えは?」

「火焔瓶…作るか」

「かえんびん?」

「確か瓶に灯油とかを詰めて、蓋をして、口に火をつけて投げる。瓶が割れてわっ、と燃えるんだ」

「投げるのはどうなのよ」

「それを地雷に応用するんだよ。石油…は無いよな」

「聞いたことないわ」

「燃えるものならなんでも良いんだけど」

「エタノールはどうだ?」

「アーノルドさん、ナイス。それなら醸造所で手に入るはずだぜ」

「じゃ、手分けして行きましょう。アーノルドも手伝って!」

「やれやれ、人使いが荒い…」

「アンタの仕事でしょ!」


「ほれ、こうして導火線をつくるんじゃ」

 導火線ってただの縄じゃないのね。芯に火薬を混ぜて作るんだ。

「縄だけじゃと、自然消火するからの」

 ごもっともで。

 手先が器用な連中と不器用なので別れてね、不器用なほうはひたすら瓶にアルコールを詰めるお仕事。簡単なお仕事で…あ、また溢した。

「漏斗が意味ないじゃん…」

「アタシドワーフじゃないし!」

「火薬が足りないからの、導火線に回すぞい」

 これが難しいのよ。導火線を瓶に浸して、蝋を詰めるんだけど。

「わああああ、火が付いた!」

 溶かすときに火を使うからね?

 水魔法で消火。危ないったらありゃしない!

「エタノールだけでは爆発せんよ」

 ドンバスは飄々としている。結局十個ほど無駄にした。結局、三日三晩かかっちゃった…夕立の度に魔法で雨除けしなきゃいけなかったからだけど。にしても、並べてみると壮観ね。

「あとはこれを埋める場所ね」

「この前の接敵地点はどうだ?」

 ジャックが言った。なんとなく参謀的な立場になっている。経験豊富だしね、助かるは助かるのだけれど。

「あの場所にずっといるかしら?」

 カーライル隊の壊滅からもう一週間になる。肉食動物なら、エサを探して歩き回るはずだけれど。

「偵察を出すか」

「危険でしょ」

「アレを使うか」

 アーノルドが差し出したのは望遠鏡だった。

「望遠鏡なんてあるの!」

「ああ、二つしかないが」

「流石お金持ちギルド」

「金があるときに買ったのだよ」

「でも、これがあれば」

「遠くからでも索敵できるな」

「あとは視界の確保か」

「森の中だものね…ベルには大きいし」

「ボクには無理だなぁ」

「…アタシか」

「ペルル殿が索敵されるというなら、一体誰が攻撃すると言うのかね?」

 アーノルドの言う通りで。

「アンタ、良いアイディアないの?」

「うーん、どうだろう…」

 しばらくして、あ、そうだ! とあいつが言った。

「ペルルって確か、大気中の水分を操れるんだよな?」

「そうね、水魔法の基本だわ」

「という事はだ、熱源反応ならぬ、水反応とか、誰かできないか?」

「どういうこと?」

「魔導士が何人かいるだろ? で、あの巨体なら大量の水…血液なり、リンパなりが動いているはず」

「なるほど…動きを探るのね?」

「あとはすごく耳の良い奴を使うか」

「それならさ」

 レベッカが手を上げた。

「あたし、できると思う」

「あなた、火魔法属性じゃないの?」

「ふふーん、実は雷魔法も使えるのさ!」

「かみなり…ならちょっと違わないか?」

「ほうほう、タケシ君はあまり魔法に詳しくないのかな? 雷は大気の魔法だよ、つまりは空の魔法とも言える!」

「つまり…大気の流れを掴めると」

「その通り! 集中すれば一キナ先の振動も分かるの」

「それ、良いわね。じゃあ、レベッカが斥候で」

「俺が護衛と誘導だな」

「最後はアタシの攻撃! よし、これで行くわ!」

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