ジャスミン

ジャスミン

【登場人物】

麗奈（れいな）：美保に監禁されている

美保（みほ）：麗奈を監禁している

ー本編ー

麗奈Ｎ：艶のある髪が揺れるたび、私と同じシャンプーの香りがする

いつも笑顔で愛してると言ってくれる彼女

私は幸せ者なのかもしれない

監禁されていなければ

美保：麗奈、愛してるわよ

～間～

美保：おはよう麗奈。今日も可愛いわね

麗奈：おはようございます美保さん

美保：ご飯できてるわよ

麗奈：はぁい。・・・いい匂い

美保：でしょう。昨日、美味しいって噂のパン屋で買ってきたの

麗奈：そうなんですね。クロワッサンありますか

美保：あるわよ

麗奈：やったぁ

美保：じゃあ、食べましょ

麗奈：はい

美保：いただきます

麗奈：いただきます。・・・ん、美味しい

美保：よかった

麗奈：サクサクでバターの香りがすごいです。何個でもいけそう

美保：また買ってくるわね

麗奈：ほんとですか？嬉しいです

美保：ねぇ麗奈

麗奈：ん？なんですか？

美保：明日で一年よ、あっという間だったわね

麗奈：一年ですか・・・

麗奈Ｎ：一年前。それは私の日常が思わぬ方向に動き出した日だ

～回想シーン～

美保：麗奈ちゃん、愛してるゲームって知ってる？

麗奈：知ってますよ。愛してるって言いあって照れた方が負けのやつですよね

美保：そうそう

麗奈：それがどうしたんですか？

美保：やらない？

麗奈：えっ先輩とですか？

美保：私とだと嫌だ？

麗奈：そういうわけじゃないですけど、なんというか勝ち目なさそうだなぁって思いまして

美保：そう？普段愛してるなんて言わないからすごく弱いかもよ？

麗奈：私だって言わないですよ！

というか先輩がそういうのやろうって言うの意外です

美保：一人の時間が長いとね、嘘でも愛してるみたいな言葉を求めたくなる時があるのよ

麗奈：気持ちはわからなくもないです

美保：でしょ？だから一緒にやらない？

麗奈：私でいいんですか？

美保：麗奈ちゃんがいいのよ

麗奈：わっなんか今きゅんってしました！やっぱり先輩には勝てない気がします

美保：ただのゲームだから軽い気持ちでいいのよ

んーじゃあ麗奈ちゃんが勝ちたいって思えるような条件をつけようか

麗奈：条件ですか？

美保：そう。例えばゲームで負けたら相手の言う事を一つ聞く、とかどう？

麗奈：なんでもいいんですか？

美保：なんでもいいわよ

麗奈：恋人の有無とかも聞いていいんですか？

美保：そんなのゲームしなくても答えるわよ。恋人はいないわ。でも、好きな人ならいる

麗奈：えぇ！先輩好きな人いるんですか！！誰ですか！！私の知ってる人ですか？？！

美保：それはあなたが勝ったら教えてあげる

麗奈：わかりました。絶対勝ちます

美保：ふふっ。じゃあ私からでいいかしら

麗奈：いいですよ

美保：いくわね。愛してる

麗奈：愛してる

美保：愛してる

麗奈：愛してる

美保：愛してるわよ、麗奈

麗奈：ふあ！？わ、私も愛してましゅ（照れる）

美保：ふふっ、麗奈ちゃんの負けね

麗奈：あーー！！やっぱり負けたぁ！！もーー突然呼び捨てなんてずるいですよ！あんなの誰でも照れますって！！

美保：相手を照れさせたら勝ちだもの。なにもずるくないわよ

麗奈：そうですけど・・・悔しいです

美保：もう一回する？

麗奈：いや、何度やっても同じだと思うのでやめときます

美保：そう

麗奈：はぁ～知りたかったなぁ、先輩の好きな人。そういう噂全然ないから真実を知るチャンスだったのに～

美保：麗奈ちゃん。こっち来て

麗奈：ん、なんですか

美保：今から言うこと、誰にも言っちゃだめよ

麗奈：わかりました

美保：私の好きな人はね

美保：（麗奈の耳元で）・・・あなたよ

麗奈：・・・へぇー先輩の好きな人って私なんですねー意外だぁ

・・・えぇ！？私ですか！！？

美保：しー。声が大きいわよ

麗奈：あっ、はいすみません・・・えっ？！先輩の好きな人が私って嘘ですよね

美保：嘘じゃないわよ。本気よ

麗奈：な、なんで教えてくれたんですか。私負けたんですよ

美保：私の願い事に大きく関わってくるからよ

麗奈：へ？

美保：麗奈ちゃん

麗奈：は、はい

美保：私と一緒に暮らしましょう。ずっと二人で

～回想終わり～

麗奈：最初は冗談だと思いました

美保：あなたを好きだってこと？

麗奈：それはそうです！会社の憧れの的である美保さんに好きだと言われるなんて思わなかったですからね！

美保：あの時の驚いた麗奈可愛かったわねぇ

麗奈：人生で一番声出た気がします

あぁでも冗談だと思ったのはそこじゃなくて。いやそこもなんですけど

美保：どこよ

麗奈：一緒に暮らそうと言われたことです。あの愛してるゲームで自分の住む家が変わるなんて思わないじゃないですか。絶対嘘だと思ってました

美保：まぁ、普通ならそう思うわよね

でも、私は本気だったの。あなたとここで暮らすことは密かな夢だったからね。あなたを養うために働いてたと言っても過言ではないわ

麗奈：もっと別のことに使ってくださいよ。推しに課金するとか自分のご褒美とか色々あるじゃないですか

美保：麗奈という好きな人に課金してるし、それは自分の幸せにも繋がってるから何も問題ないけど？

麗奈：私はそんな価値ないですよ

美保：あるわよ。あなたのおかげで私は幸せよ

麗奈：・・・

美保：でもね、この幸せは全部都合のいい夢で、朝起きたら何もなくなってるんじゃないかって怖くなるのよ

麗奈：そんなこと考えるんですね

少なくとも私と過ごしてる時間は夢なんかじゃないですよ。全部本物です

美保：・・・麗奈。・・・っ！（麗奈を抱きしめる）

麗奈：わっ！美保さんっ！

美保：はー私と同じ香り。麗奈がここに居るって実感する

麗奈：抱きしめなくったって逃げませんよ

美保：ほんとに？

麗奈：ほんとに。私は美保さんのこと好きですから

美保：私は麗奈の事愛してるわよ

麗奈：んあーー・・・ありがとうございます

美保：照れてる？

麗奈：えぇ、まぁ・・・はい・・・

美保：一年一緒にいるのに？

麗奈：慣れないですよ

美保：ふふっそういうとこ可愛い

ねぇ麗奈、していい？

麗奈：・・・いいですよ

美保：じゃあ、準備しようか

～間～

麗奈：あの、今日はちょっと大胆じゃないですか

美保：そうかしら。可愛い胸が主張してていいわよ

麗奈：そんなこと言わないでください！恥ずかしいです！

美保：ふふっ可愛い。んじゃあ、口塞ぐわね

麗奈：えっちょっとまっ、んっ

美保：ここをこうして、そしたらこうやって・・・ん、できた！可愛い！

麗奈：んんーんー

美保：素敵よ麗奈

麗奈：んー

美保：こーらっ、目逸らさないの

麗奈：んんっ

美保：やっぱり一つ一つのパーツが綺麗ね。ずっと見てられる

麗奈：んーんー

美保：ねぇ麗奈

麗奈：んっ

美保：ずっと傍にいてね

麗奈Ｎ：ふわりと、同じシャンプーの香りが私を包み込む

この幸せが終わる恐怖や不安があると彼女は言った。それを聞いて『ずっと傍にいてね』という言葉が口癖なのが少しわかった気がする

私がいるから幸せで、私がいるから不安になるんだ。だからこの人は

美保：・・・ふふ、えい

麗奈：むうっ？！

美保：ふふ、すごい反応

麗奈：んーんーんー！（みーほーさーん）

美保：そんな怖い顔しないで。今外すから。・・・はいっ

麗奈：ぷはっ、わざとやりましたよね美保さん！！

美保：えぇ、だって毎回可愛い反応するんですもの

麗奈：も～！！

美保：痛くない？

麗奈：気にするとこそこですか！

美保：あなたを傷つけたいわけじゃないからね。痛いなら緩めたりはするわよ

麗奈：解いてはくれないんですか？

美保：まだやったばっかりじゃない

麗奈：結構恥ずかしいんですけど

美保：まぁまぁ、これが終わったらお茶にするから。今日はいいジャスミン茶用意してるのよ

麗奈：ジャスミン茶は嬉しいですけど・・・。あとどれくらいかかりますか

美保：んー私の気が済むまでかな

麗奈：えぇ・・・

美保：てことで写真撮るわね

麗奈：えっ？！この姿撮るんですか？！

美保：当たり前でしょう

麗奈：は、恥ずかしいですってぇ・・・

～数日後～

美保：おはよう麗奈

麗奈：おはようございます美保さん

美保：今日も可愛い

麗奈：はいはい、もー美保さん今日仕事でしょ、早く行ってください

美保：麗奈が愛してるって言ってくれればすぐ行くわ

麗奈：愛してます。ほら、言ったんだから仕事行ってください

美保：んふふっ。じゃあ行ってきま・・・あ、ちょっと待って。チョーカーに鎖繋げないと。・・・うん、いいわね。今日も可愛い

それと今日暑くなるみたいだから水分ちゃんと摂ってね。ジャスミン茶も淹れてあるからいつでも飲んでね

麗奈：わかりました

美保：じゃあ行ってくるわね麗奈、愛してるわよ

麗奈：行ってらっしゃい

・・・ご飯食べるかぁ。食べたら何しよう・・・久しぶりに本読もうかな

麗奈Ｎ：美保さんが仕事の日はチョーカーに鎖が繋がれ、私はこの家から出ることはできない。でも、ゲームや本など一日中家にいても飽きないくらい設備は整っていた

麗奈：相変わらずたくさん本あるなぁ。何か面白いものないかな・・・ん？『囚われのプリンセス』。まるで今の私みたい・・・なんて私はプリンセスなんかなれないよ

～本を読み始める麗奈～

麗奈：『美しいプリンセスは誰からも愛されていました。しかし皆に愛されることを妬んだ魔女はプリンセスを誘拐し、塔へ閉じ込めました。プリンセスは助けてと叫びましたが誰にも声は届きません』

麗奈：姫が消えたんだから国は大騒ぎだろうな。案外すぐ見つかりそうだけど・・・私は誰かに心配とかされたのかな。きっとされたよね。されたはずだよ。・・・ううん、考えるのやめよう

～しばらく本を読む麗奈～

麗奈：『そして無事に王子様が魔女を倒し、プリンセスは王子と結婚し、幸せに暮らしました』

麗奈：面白かった～たまたま王子が通りかかって倒すってのは王道だよね。でも、この二人はずっと幸せに暮らすんだろうなぁ

わ、もう外暗い。ついつい夢中になっちゃたからなにか飲まないと

～立ち上がろとすると目眩がし、すぐに座り込む麗奈～

麗奈：あ、れ。おかしいな・・・はぁ、はぁ、なんかフラフラす・・・る・・・はぁっ誰か・・・美保さ・・・

～彼女は部屋の中で意識を手放した～

美保：ったくあのハゲ、ちょっとだけとか言って二時間も話しやがって。おかげでこんな時間じゃない。何度頭の中で殺したことか。いつか本当に殺そうかしら。どんな殺し方がいいかしらね。・・・なんてそんなことしたら麗奈と一緒にいれなくなっちゃう。そんなのは絶対に嫌だ

～家に帰ってくる美保～

美保：ただいま〜ってあら？電気ついてない。麗奈～？・・・・寝てるのかしら

この時間に寝るなんて珍しいわね・・・っ？！麗奈！！どうしたの麗奈！！！

～倒れている麗奈に駆け寄る美保～

美保：麗奈！お願いだから返事して！！あなたがいなきゃ私は生きてる意味ないの！！だからお願い返事して！！！麗奈！！麗奈ってば！！

麗奈：・・・

美保：いや・・・なんで返事しないのよ

・・・本当は呼びたくないけどそんなこと言ってられないわね。もしもし、麗奈が、私の大切な人が倒れてるんです。助けてください

～数日後、病院の外。退院した麗奈とどこかいつもと雰囲気が違う美保が歩いてる～

美保：無事退院できてよかったわね

麗奈：はい・・・まさか熱中症になって倒れるなんて思いませんでした

・・・美保さん

美保：なに

麗奈：心配かけてすみません

美保：麗奈が生きてたからいいのよ。でももうあんな思い二度としたくないわ

麗奈：ごめんなさい

美保：謝らなくていいのよ。気にしてないから

麗奈：でも・・・

美保：ほら、早く帰りましょ

～歩き出す美保～

～立ち止まる麗奈～

麗奈：・・・

美保：ん？どうしたの麗奈

麗奈：怒ってますよね

美保：怒ってないわよ

麗奈：嘘です。美保さん私が倒れてから一回も笑ってないじゃないですか。美保さんに言われたこと守らなかった私に怒ってますよね

美保：そんなことないわ。本当にあなたが生きてただけで嬉しいの。だからあなたには怒ってないのよ

麗奈：だから嘘つかないでくださいよ

美保：嘘なんか

麗奈：一年間一緒にいるんです。嘘かどうかくらいわかります

美保：・・・

麗奈：本当にすみませんでした。私、美保さんに迷惑かけちゃって

美保：（被せて）麗奈

麗奈：っ！

美保：怒ってない。怒ってないから。帰りましょ

麗奈：・・・はい

～無言で歩き出す二人～

～家に着くもどちらも言葉を発さない～

～部屋に入ると麗奈を抱きしめる美保～

麗奈：わっ美保さ

美保：・・・違う

麗奈：え？

美保：同じ匂いじゃない。色んな匂いがする

麗奈：それは病院にいたから当たり前じゃないですか

美保：全部脱いで

麗奈：な、なんでですか

美保：いいから早く

麗奈：美保さんなんかおかしいですよ、やっぱり怒ってますよね

美保：ねぇなんで脱がないの。あぁ、わかった、久々に外に出て匂いがいつもと違うから脱ぎたくないのね。それなら私が脱がせてあげる

麗奈：え、ちょ、美保さん！脱ぎます！脱ぎますから！私一人でできますからやめてください！離してください！

美保：うるさい！！

～思いっきり麗奈の頬を叩く美保～

麗奈：いっ！！

美保：いつから私に逆らうようになったの。同じシャンプーの香りがして、私の言う事を全部聞いてくれる麗奈はどこにいったの。ねぇどこにいったのよ

麗奈：み、美保さん・・・

美保：・・・なんでそんな目で私を見るのよ。私の事嫌いにでもなったの？

麗奈：ち、ちが

美保：今のあなたは色んな人に触られて、病院の匂いに染まって、私の言うことにも逆らって。そんなの私の知ってる麗奈じゃない。私以外誰も触ってほしくなかった。だから一年間ずっとここから出さなかったのに！あのハゲに無駄話されようが何しようが、家に帰れば私の大好きな麗奈がいる。そう思うだけで幸せだった。

けど帰ってきたらあなたが倒れてて。あの時、救急車を呼べば穢れた男たちに私の麗奈が触られるってことを想像したら虫唾が走った。でも麗奈がいなくなるのはもっと嫌だったから救急車呼んだの

偉いでしょ私。自分の欲より麗奈を優先したの、だって麗奈が大切だから

でも病院から帰ってきたらあなたは私の知ってる麗奈じゃなくなった

麗奈：美保さん・・・

美保：逃げないって言ってたあの言葉は嘘？それともここにいるより外が方が楽しかった？

麗奈：私は

美保：・・・もう私の麗奈じゃないのね。誰のせい？ねぇ誰のせいよ！

・・・あぁそっか病院のせいね。だったらみーんな殺さなきゃ。みーんな消さなきゃ！でもその前に

麗奈：ま、待って！美保さ・・・

美保：同じシャンプーの香りがしなくても、あなたが逆らっても、私はあなたを愛してるわ。だからまずはいつも通りの可愛い麗奈に戻ってよ

私決めたの。もう他の奴らに触らせないように、一瞬たりともあなたから離れないって

大丈夫、あなたのことは美しいまま保ってあげる。美保って美しく保つって書くの。私にぴったりの名前よね

～ゆっくりと麗奈に近づく美保～

麗奈：っねぇ、待ってよ美保さん、美保さ・・・んっ！！

～麗奈に馬乗りになり首を絞める～

麗奈：かっは・・・っん・・・み・・・ほさ・・・

美保：ねぇ私の可愛い可愛い麗奈。これからも今まで通り過ごしてくれるわよね？

麗奈：・・・ご・・・なさ・・・

美保：なんで謝るのよ。私が欲しいのは謝罪じゃない

麗奈：・・・ぁっ

美保：苦しんでる顔も可愛いわね。愛してる、愛してるわよ麗奈！私のこの想い届いてるかしら！！届いてるわよね！！だから一年間ずっと一緒にいたのよね！！

美保：あなたを世界で一番愛してるのは私よ！！文句なんて受け付けないわ！あなたは私のものよ！！

麗奈：・・・

美保：ねぇ麗奈も私のこと愛してるでしょ？・・・あら、麗奈？返事してよ。なんで返事しないのよ。もしかして死んじゃったの？・・・あ、そっか私の手で麗奈を

っそんな、麗奈・・・

ふふ、アハハハハハハハハ！！死んじゃったならもう誰にも触られないわ！！最初からこうするべきだったのかもしれないわね。そうすれば麗奈が穢れることはなかったんですもの

・・・ごめんね、痛かったよね苦しかったよね。今私と一緒にしてあげるからね。消毒液の匂いなんて消してあげるからね

はぁ・・・麗奈・・・

～優しく抱きしめる～

美保：ずっとずっと愛してるからね。だから・・・ずっと傍にいてね

終わり