異世界館長・一撃必殺の空手師範が拳一つで異世界を無双する!

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第1話 館長・ゴブリンの巣穴を襲撃する

 『女冒険者歓迎! とどろき絶対にお断り!』


 最近、ゴブリンの巣穴の入り口にはこのような立札が立つことが増えた。


「なんでぇ、なんでぇ、この巣穴も俺をお断りってか」


 白い道着に髭面のマッチョ。

 轟は女神さまがこの世界に召還した勇者である。


 轟は一撃會館という空手の館長をしていた50歳くらいの男性であるが、若くてゲーム好きの男性をこの異世界に召還しても狡猾な魔王に倒されてしまい、被害が拡大していたので、女神さまも趣向を変えて、この空手一筋の轟一徹とどろきいってつを召還した。


「ゴブリンさんよ! お断りしても入ってきちまうのが災害ってやつだぜ!」


 轟は得意の回し蹴りで立札を粉砕すると、ゴブリンの巣穴へと入っていく。


「やっぱりよ、百人組手ってのは実戦に限るな」


 轟は狡猾で狂暴と言われるゴブリンたちを次々に正拳突きや回し蹴りで倒していく。


「王様、この巣穴にもあの轟が入ってきました!」


 下っ端ゴブリンは巣穴の奥で女冒険者と楽しもうとしていたゴブリン・キングという巣穴の王様に轟襲撃の報を知らせる。


「よし、ここに連れてこい! この女冒険者を盾にして奴が無抵抗になったら殺してやる!」


 ゴブリン・キングは人質を盾に轟を倒すつもりだった。


 轟はゴブリン・キングの部屋の扉も正拳突きで粉砕し、中に入ってくる。


「お前さんがここの巣穴のトップ、いわば館長だな! さて、おっぱじめようや!」

「まて、轟、お前が一歩でもそこを動いたら、俺はこの女を殺すぞ! いいのか?」


 ゴブリン・キングは轟が武道家なら絶対に女冒険者のために無抵抗になると思った。


「俺はよ、男と男の勝負に口を挟む奴はいねぇと思うのよ、ここで死ねるなら本望だよな? なあ、ねぇちゃん!」

「いや、普通に助けてください!」


 女冒険者は轟に助けを求めるが轟はお構いなしにゴブリン・キングに近づく。


(こ、コイツ、想像以上にイカれてやがる……)


 ゴブリン・キングは轟には話し合いが通用しないと判断し、女冒険者を轟に投げつけると、二人まとめて殺そうとこん棒を叩きつけた。


「おい、おい、拳で語り合おうぜ!」


 しかし、こん棒は轟の拳によって粉砕されており、次の瞬間、轟がゴブリン・キングの胸から腹にかけて正拳突きを何発か打ち込むと、ゴブリン・キングはあばらや、あらゆる骨を粉砕され、その場に倒れた。


「さて、今日の道場破りも終わりだ。ギルドに戻ってメシにするか!」

「いや、助けてくださいよ! 一緒にギルドに連れて行ってください! お願いします!」


 轟は道場破りに夢中になっていて気づかなかったが、目の前にはゴブリンに捕まっていて、轟のおかげで解放された魔術師の女性が立っていた。


「なんだ、お前さん捕まっていたのか?」

「いや、早い段階でそれに気づいてくださいよ!」


 魔術師の女は轟に腹を立てるが、轟からは冒険者としての気構えが足りないと叱られる。


「いいかい嬢ちゃん、お前さんがゴブリンに負けたのは、あんたの覚悟が中途半端だからだ!」

「確かに……それは否定できないです。おかげで仲間も失った。私がもっと強力な魔法を使えていれば……」


 魔術師の女は轟の言葉にわが身を反省し、魔術師としての未熟さを恥じた。


「いや、そうじゃねぇ。魔法なんてモノに頼っているから、この世界の冒険者は弱いんだ! やりあうなら、てめぇの体と精神を極限まで鍛えろってことよ!」

「え……」

「まあ、今晩は俺がメシを奢ってやる、ついてきな!」


 こうして、魔術師の女は轟と一緒にギルドに向かうのであった。

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