Episode9 解除!【R15・不快注意!】

 私、A美、B沙、C奈の四人は、大学時代からの仲良しグループだ。

 だが、最近の私たちはC奈に……正確に言うとC奈とC奈の彼氏に辟易していた。


 女だけの飲み会であっても、女だけの旅行であっても,C奈は彼氏を毎回連れてくる。

 そして、C奈の彼氏も当然のように毎回C奈に付いてくるのだ。


 だから今日は極秘で、A美とB沙と私とで私の部屋で飲むことにした。


「ほんっといい加減にして欲しいわよ。飲み会だけじゃなくて、旅行にまで彼氏を連れてくるとかさぁ。C奈にもあの彼氏にも少しは空気読んでもらいたいんだけど。まさか、C奈があんな子だとは思わなかった」とA美。


「C奈にもムカつくけど、あの彼氏にはもっとムカつかない? 当たり前みたいに笑顔でやってきて、これまた、さも当たり前みたいに私たちの輪の中にC奈と一緒に入ってきてさ。そもそも同棲しているんだから、あんな四六時中一緒にいなくたっていいじゃん」とB沙。


 私は、怒りの息を吐くA美とB沙に頷きながら考えていた。

 彼女たち二人の苛立ちであり鬱憤は最もだ。

 そして、相当に積もり積もったものがあるのは私も同じだ。


 どこにでも彼氏を連れてくる子がいるって話は聞いたことはあったけど、まさかC奈もそのタイプだったとは……彼女がかかっている恋の病もしくは恋の魔法が解ける時まで、ずっとあの彼氏を連れてき続けるだろう。

 現在のC奈の彼氏へのべた惚れっぷりからすると、その魔法が解けるのは一体いつになるのやら……とため息をつかずにはいられない。


 …………ん? 待てよ。確かにC奈がどこにでも彼氏を連れてくることには相当にうんざりはしているけど、私たち三人とも何かもっと他に考えなければならないことがあったような……何かもっと他に重大なことを忘れているような……?


 私はその何かの正体を突き止めるため、自身の記憶の中に深く潜ってみることにした。

 パラパラパラ、と本のページをめくるように。

 最初にC奈があの彼氏を連れてきたのは、いつだった?

 私たちは何回あの彼氏に会った?

 あの彼氏と何を話して……それから”私たちはあの彼氏と何をした”?!


 ……………………そうだ……忘れていたというよりも……私たち三人ともが、”あれらのこと”については深く考えないように”されていた”のかもしれない!!!


 突然、弾かれたように立ち上がった私に、A美とB沙が目を丸くした。


「よく考えて、二人とも! あの彼氏がどこにでも付いてくることも問題だし、すごく嫌だけど……一番の問題はそれじゃない。それじゃないのよ! なんで毎回、飲み代や旅行代だけじゃなくて、C奈とC奈の彼氏が住んでいるアパートの家賃や光熱費まで私たちで分担して全額負担しているの!? ううん、何よりも……なぜ、私たち三人ともがC奈と一緒にあの彼氏と何度もセックスしていたの?! あの彼氏が”生でやりたい”からといって、なぜ私たちが当然のようにピルを服用させられているの? なぜ私たちの誰一人として、それらのことについてはおかしいとか、あり得ないとか、気持ち悪いとか微塵も思わなかったの?!」


 A美とB沙の顔が赤くなり、青くなった。

 ”身の毛もよだつ”なんて言葉すら通り越していた。

 

 私たち全員ともが”させられていたこと”の異常さに気づいた、まさにこの瞬間、ポポポポポーン!!!と弾けるような……私たちにかけられていたらしい何らかの魔法やら術やら設定やらの解除を知らせるがごとき音が部屋に響き渡った。



(完)

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