(四)

 東京お台場にある商業施設、テレットタウンの大観覧車は、約四分の三まで周回し、そろそろ降りる準備をしなくてはいけなかった。

 観覧車のかごの中で、加治元は目の前で涙を流している園子にうろたえて、なんども「どうしたの」とか「大丈夫?」とか「俺、何か悪いこと言った?」と声を掛けた。

 ようやく落ち着きを取り戻しつつある園子がなんとか「そうじゃないの、そうじゃないの」とだけ答えた。

 園子は高校に進学・卒業し、その後大学生活を経て社会に出て十年間働いてきた。その間、恋愛とはずっと無縁で、会社でも仕事中心の日々だった。そして三〇になり、結婚を意識して、今の彼と付合うことになった。


(続く)

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