第3話

 案の定と言えばいいのか、動きづらいウエディングドレスを着て、足元も動きづらいハイヒールを履いた私の足取りは遅く、そんな私に歩幅を合わせている乱入者の足取りも遅かった。結果として、私達はすぐに式場のスタッフの追いつかれて、こうして止められたのだった。


「邪魔だ。そこをどけ」

「ですが……」

「邪魔だと言っている。おれたちの邪魔をするな!!」


 乱入者は静かに言い放つと、式場のスタッフを睨みつけた。大柄な乱入者の前では式場のスタッフも怖いのか、先程の芳樹さんと同じく及び腰になったようだった。その頃になってようやく、式場の警備員と一緒に芳樹さんがやって来たのだった。

 乱入者は舌打ちをした。


「おい」

「へっ……?」


 急に話しかけられて、やや間の抜けた返事をすると、乱入者は荷物を抱える様にして私を肩に抱き上げたのだった。


「きゃああ!」

「さすがに、この格好だと重いな……」


 そんなことを呟いた乱入者からは、汗のような臭いがした。緊張して汗でも掻いたのだろうか。

 それなら、こんなことやらなければいいのに……。


「掴まってろよ」

「ちょっと! まっ……」


 私の反論も虚しく、乱入者は式場スタッフに向かってタックルをするように駆け出す。

 急に大柄な男が走ってきたからか、式場のスタッフは声を上げて左右に避けてしまったのだった。

 誰も阻む者のいない中、そのまま乱入者は式場の出入口に向かって駆けて行く。

 乱入者のあまりのスピードの速さに、私は反論するどころか、舌を噛まない様に口を閉じているのが精一杯だった。

 後ろを向くと、今にも倒れそうな芳樹さんと、警察に通報する式場スタッフの姿が見えた。

 そうして、乱入者は私を抱えたまま、式場の外にある駐車場に向かったのだった。


 駐車場に停めていた大型車の後部座席に押し込まれると、私はすぐに車から出ようとした。

 しかし、それより早く乱入者は運転席に乗り込むと、扉をロックしてしまった。


「どこに連れて行くんですか?」

「約束した場所だ」


 それだけ言うと、乱入者は車のエンジンを掛けた。式場での騒ぎを聞きつけたのか、他の警備員たちが車に向かってくるのが見えた。

 乱入者はすぐに車を走らせると、駆け寄ってくる警備員たちを跳ね飛ばしそうな勢いでスピードを出して、式場を後にしたのだった。

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