第15話

 エミリア様の助手となった僕。

 いきなり実質的なナンバー2になった僕に対してこの国仕える臣下は当然反発するだろうと思っていたのだが……そんな僕の予想とは裏腹に反発はほとんどなかった。  

 その理由は実に単純で、いずれ王子の誰かが王位についた際、排斥されることが確定されているエミリア様の側近という立場に価値がないからだ。

 

 エミリア様はあくまで暫定的なナンバー1。

 王子の誰かが国王になった際、これまで実権を握っていたエミリア様を疎ましく思い、彼女を排斥することになるだろうというのがこの国に仕える臣下すべての共通認識である。

 

 だからこそ、僕の立場を羨む者は誰もいなく……そして、エミリア様は優秀であるということも臣下全員の認識であるため、彼女が配下にすると決断した僕も優秀だろうと周りから思われているので、周りの臣下たちは基本的に大人しく僕の命令に従ってくれる。


「東部で反乱が発生……なるほどね」

 

 ここに来て一週間。

 僕はすっかり馴染んでいた。


「えっと……僕がちょっとばかり編成をいじったあの部隊を動かして鎮圧に向かわせて」


「了解致しました」


「その引き抜き分国境沿い空くだろうから、適当な貧民集めて前線に送っておいて」

 

「貧民を、ですか?」


 僕の司令。

 その意味がわからず僕の秘書を勤めてくれている女性が首を傾げる。


「うん。そう……人がいるってのはそれだけで脅威だろうから。何もしないよりはマシだと思うよ」


「承知致しました」

 

 僕の言葉に秘書さんが頷く。


「それではリスト様の部隊を反乱鎮圧に、貧民より部隊を集め国境部送っておきます」


「うん。それでお願い」


 僕の秘書さんが今伝えた司令を伝えるため、部屋から出ていく。


「さて、と……どうなるかなぁ……」

 

 秘書さんが部屋から出ていくのを見送った後、僕はここ一週間のことを考えながら一人、お水をすすった。

 この国、水資源は豊富にあるから良いね。

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