「薬指」「始発」「ザビエルカット」

終電後の駅のホーム、俺はただそこに立っていた。

「あなたはいつまでそこにいるつもりですか?」

「始発までには帰るつもりだ」

「奇遇ですね。私もです」

ザビエルカットの神父風の男が語りかけてきた。

「お前もあの組織の人間か?」

「はいそうです。私のような派手な格好は稀ですが」

「あの組織の人間は必ず十字架を持ってると聞く。そんな格好をしているのに十字架が見つからないが?」

「普段から十字架は隠し持つようにしています。組織がバレてはいけないので」

「そんなに派手で言うことか?」

「木を隠すなら森の中です。ところであなたは結婚されていらっしゃるのですか?珍しい指輪ですけど」

その神父は俺の薬指を見ながらそう言った。

「木を隠すなら森の中……か。なるほどな」

その瞬間俺は距離を置き、指輪のある腕でその神父を殴りつけた。

指輪は十字架の形になり、その神父を十字の炎で燃やし尽くした。

「十字架を隠し持ってるという情報まではあったがどのように隠し持ってるかまでは知らなかったらしいな」

夜のホームで巡回していて正解だった。

木を隠すなら森の中。まさか敵が俺達の組織に扮して接触してくる事態が起きるとは。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る