怪物誕生編

94、怪物の産声

 遥か昔、地球ではない何処か遠い惑星わくせいにて。それはその星にさかえていた超古代文明での話だった……

 その惑星ではかなり高度な文明ぶんめいが栄えていた。量子コンピュータすら凌駕する霊子コンピュータが一般的に普及ふきゅうしシンギュラリティーを超えたAI技術は加速度的に文明の発展を促した。常温核融合やほしに存在するあらゆるエネルギー資源さえ、余さず運用を可能とした。

 どころか、意思いしのエネルギーという高次エネルギーすら制御せいぎょし取り扱う事を可能としている。観測技術が発達した結果、魂という物質界ぶっしつかいに依存しない存在の観測にすら成功していた。

 栄華をきわめ、別の銀河ぎんがにまで進出しようとしていたその文明は。

 しかし……

 その文明は惑星ほしごと。いや、その銀河系ごとほろび去った。たった一人の、魔物と化した人物のによって……

 ……炎につつまれる超文明。そんな中、別の銀河にげ惑う宇宙船団を前にして一人の男がそれ等を見詰めながら虚ろなで呟いた。

「……ゆるさない。みとめない。彼女を絶望させるような世界など、絶対に」

 それは、あまりにも空虚うつろで一切の感情を感じさせない。ただおととして発せられただけにしか過ぎない言葉。しかし、それだけにその者の絶望ぜつぼうを感じさせるには十分に過ぎるだろう言葉ことばだった。

 次の瞬間、モノクロの光が銀河を呑み込み瞬く間に消滅しょうめつした。

 残骸ざんがいすら残らなかった。質量しつりょうの保存則すら超越し、全てを否定する無価値の破壊光が周囲を呑み込んだのだ。

 あらゆる相性差や質量差すら物ともせず、一切合切を消滅し尽くす。そんな力の具現だったのだろう。

 その終末しゅうまつの光から、命からがらげきった一隻の宇宙船。その船がある銀河系のそのとある恒星系、とある惑星ほしに漂着し……

 後に地球ちきゅうと呼ばれる事となるその惑星で、その宇宙船はつきと呼ばれる事となり。

 その者達はやがてかみと呼ばれる事となるのだった……

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