その頂へ・・・

葵羽

第1話

1999年、静岡県浜松市のとある特別支援学校で、杉山雄哉は過ごしていた。


雄哉は、この学校の高等部三年生。しかし、雄哉は生まれつき障がいを持っていた。それは、先天性の脳性麻痺による四肢体幹機能障害というもの。そのため、雄哉は毎日車いすの生活を送っている。


雄哉は静岡県にある唯一の車いすサッカーチーム「アルティメット浜松」に所属している。雄哉が車いすサッカーを始めた理由は、サッカーをテレビで観戦するのが大好きだから。だが、雄哉は心が折れかけていた。それは、車いすサッカーが向いていないと感じたからである。雄哉の夢は「スポーツで日本一になる」こと。しかし、向いていないと感じる車いすサッカーで日本一になれるか、と言われたら、語尾に?がつくことは間違いない。そのため雄哉は、今から始めても日本一を目指せるスポーツを探していた。

       

アルティメット浜松の練習後、今から始めても日本一を目指せるスポーツなんて、そんな簡単に見つからないよな・・・。と雄哉が思っていた時、チームの監督である佐藤監督があるスポーツを紹介してくれた。


「雄哉、ボッチャって知ってるか?」

「はい、学校の体育でやっているスポーツですね。」

「そうか、それなら話が早い。少し考えてみてくれ。」


その晩、雄哉は先生が紹介してくれたボッチャについて考えていた。ボッチャは、小学部の時から学校の体育でもやっているスポーツで、僕もなじみ深いスポーツである。毎年十二月に学校では、「チーム対抗ボッチャ大会」があるのだが、雄哉はジャックボールをコート内とコート外のすれすれに置くのが得意で、チームは、僕が中学部三年生の時から今年まで、四連覇を成し遂げた。チームの中心選手の雄哉は、プレーを見ていた先生方にも「ボッチャ王に君はなる」と太鼓判を押されていた。

 (このころに放送が開始されたアニメ「ONEPIESE」の「海賊王に俺はなる」のセリフをもじったものである)

雄哉にとって、ボッチャをすることは嫌いではないが、別に好きなわけでもない。でも、学校一と言ってもいいぐらいの実力を持っているボッチャなら、日本一を目指せるかもしれない。そう思った雄哉は、この晩、これからの雄哉の人生にかかわってくるであろう、一つの大きな決心をしたのだった。

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