第98話 妙な噂を吹き込まれたサブマスター
ゴーン 「盗んだ?」
ボーサ 「いや、それはキムの想像で、まだ盗んだって決まったわけじゃ…」
キム 「連中は、武器の扱いに慣れていない風でもあった。盗み出した武器の実験を、ダンジョン内でしていたんじゃないのか?」
ゴーン 「だが、そんな話は領主からは来ていないが?」
キム 「もしかしたら秘密にされているのかもしれん。領主にも対面があるからな、表に出ないうちに発見して取り戻すつもりなんじゃないのか?」
ゴーン 「もし秘密にされているのなら、俺が分かるわけがない」
キム 「
ゴーン 「…かもしれんが。イマイチ俺はギルマスに信用されてないようでな、貴族同士の情報は、平民の俺にはあまり教えてくれんのだよ。
…というか、確かなのか? 同じ武器を使っていたからといって、それが領主家から盗まれたものだという確証はないだろう?」
キム 「あれは、領主しか持っていない特殊な武器だって話だったはずだ」
ゴーン 「…ああ。魔法が使えない者でも遠距離攻撃ができるとかで、興味を持った冒険者が見せてくれと言ったが、許可された者しか触ることも見ることも許されなかったそうだ」
キム 「実はな、俺はソイツらに話しかけて、武器を見せてもらったんだ。その時に見たんだよ、見えにくい場所にの部品に領主家の紋章がついていたんだ。あれは領主家のモノで間違いない。
…もしかしたら、領主家ではまだ盗まれた事に気づいてすらいないのかも知れないぞ?」
ゴーン 「領主家の関係者って可能性もあるだろう。領主から許可を得て借り受けているんじゃないのか?」
キム 「俺たちはもう七年もこの街に居る。スタンピードの時も領主軍の近くに居たが、あんな奴らは関係者の中に居なかった」
ゴーン 「当時は戦闘に参加していなかった家族とか…」
キム 「いや、領主様には息子が一人しか居ないはずだろ」
ゴーン 「いや、娘も居たはずだ。ただ、すでに他の貴族家に嫁いているはずだがな。ああ、領主には妹も居たな。ただ、その妹は今は王都で王宮騎士団長をしているし、独身のはず。ダンジョンを彷徨いているわけがないな」
キム 「領主の妹ってことは結構な歳のはずだろ? ダンジョンで見たのは若い……というほどもでもなかったな、中年の男だった。(※)他に領主に親類が居るって話は聞いたことがないだろう?」
(※現在クレイは二十九歳である。)
ゴーン 「親類でなくとも、領主の許可を受けた者かもしれんぞ?」
キム 「領主家以外の者に触らせなかった武器を、親類でもない者に与えたというのか?」
ゴーン 「確認してみなければ分からんだろう」
キム 「だから、確認してみてくれって話さ」
ゴーン 「領主に問い合わせろっていうのか? 俺に? 貴族の対応はサイモンの役目だよ」
キム 「ギルマスが戻るのを待ってたら逃げられてしまうかも知れないだろ。騎士団に情報を流して指名手配したほうがいいんじゃないか?」
ゴーン 「証拠もなしに指名手配などできんよ。
だが、キム達は部屋を出たところでクレイ達がギルド内に居るのを見つけたのである。
キム 「サブマス、アイツらだ。逃げもせずギルドに顔を出すとはな。一応、探りを入れてみたほうがいいんじゃないか?」
ゴーン 「……」
受付嬢に近づき小声で尋ねるゴーン。
ゴーン 「ロッテ、見ない連中だが、あいつらは?」
ロッテ 「はい? ああ、さっきの。先程冒険者に登録した三人ですね」
ゴーン 「新人冒険者か?」
ロッテ 「本人達は元冒険者だと言ってるんですが。どうだかアヤシイと私はまだ思っていますけどね、ラルクが責任持つって言うので、新規登録させました」
ゴーン 「元冒険者の再登録か」
ロッテ 「男はクレイと言うそうですが……聞いて下さいよ! 二人の獣人の少女はあの男の奴隷だそうですよ! この街で奴隷を使うなんて…」
ゴーン 「この街で奴隷が忌避されている事を知らないとは、余所者か? まぁ見たことない奴だしな」
サブマスターのゴーンは八年前に、受付嬢のロッテは二年前にこの街の冒険者ギルドに異動してきたので、クレイと会った事がないのであった。
ロッテ 「あの男、どうも、怪しいんですよ。元冒険者だと言うんですが、出してきた
ゴーン 「ほう? 死んだはずの冒険者が、生きていたというわけか?」
ロッテ 「そういう事になりますが……もしかしたら、どこかで死んだ冒険者のギルドカードを手に入れて成り代わろうとしてるんじゃないかと思って…」
ゴーン 「だが、ギルドカードは魔力紋が登録されているんだ、調べれば本人のモノかどうかなんてすぐに分かる事だろう?」
ロッテ 「それが…魔力紋は一致したんですが、読み取り機にエラーが出てしまいまして……」
ゴーン 「エラー?」
ロッテ 「はい、私も見た事がないエラーで。それで、怪しいと思ったんですよね。もしかして、カードに何か細工がされていたのではないかと…」
ゴーン 「なるほど、奴隷の件といい、色々と、たしかに怪しいか……
彼らの買取が終わったら、私のところに連れてきてくれるか?」
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