第68話 独壇場の快進撃
トニー 「おっとストップだ!」
クレイ 「?」
急に後ろからトニーの声が聞こえたので振り返ってみると、脇道に足を踏み入れようとした冒険者を止めたところだった。
ギージ 「なんだよ?」
トニー 「罠がありそうだから止めてやっただけだ」
ギージは見えにくい場所にあった脇道を発見し、その奥に宝箱が見えたので、抜け駆けして一人で入ろうとしたのだった。
このダンジョンからはたまに価値が高いモノが出ることがあるのだ。
だが、その脇道にはトニーも気づいており、調べて何か異変があるのを察知していた。ダードに何か知っているか訊こうとしたところでギージがフライングしようとしたのだ。
ダード 「ほう、罠に気づいたか。さすが
ギージ 「へっ、罠になんか掛からねぇよ、宝箱が魔物か本物かくらい、開けるまえに確認するさ」
トニー 「宝箱じゃない、足元だ」
ダード 「そうだ、入ってすぐの床に転移の罠が隠れている。ほれ」
ダードが小石を拾って枝道に転がすと、土の上に一瞬だけ、魔法陣が薄っすらと浮かびあがり、小石とともに消えた。
ダード 「宝箱に気を取られて足元がお留守になると痛い目を見る事になるぜ?」
クレイ 「おっ魔法陣!」
思わず近寄ってみるクレイ。
ダード 「おい、あまり近づくとあぶねぇぞ」
クレイ 「大丈夫だ、これ以上近づく必要はない」
そう言うと、クレイも小石を転がしてみた。だが、何も起きない。
ダード 「魔力がないと反応しないんだよ」
なるほど、先程ダードが投げた小石には、ダードの魔力が込められていたようだ。
クレイにそんな芸当はできないので、腰に着けたマジックポシェットから屑魔石をひとつ取出し投げてみた。すると魔法陣が浮かび上がる。
魔法陣は一瞬で消えてしまったが、それで十分である。クレイは一目見るだけで、スキルによってその魔法陣を写し取ってライブラリーに記録してしまえるのだ。
さっそく、脳内スキルを発動しデコンパイルを始めるクレイ。だが、さすが転移罠魔法陣の内容は膨大・多重・複雑であった。内容を
ギージ 「罠を飛び越えたら行けるか?」
ダード 「駄目だ、上を通ったらアウトだな」
ジョン 「罠に嵌まったら、どこに飛ばされるんだ?」
ダード 「ランダムに違う階層に飛ばされる、のだろうと言われている。だが、なにせほとんどの冒険者が戻ってこないので確証はない」
トニー 「ほとんど、と言う事は、戻ってきた者も居るという事か?」
ダード 「
ギージ 「じゃぁあの宝箱はどうするんだよ? 諦めろってことか?」
ダード 「そうだよ、ここで長く活動してる冒険者達は、あの宝箱には手を出さないのさ。そういう説明のためにも、最初はガイド付きってルールになってるわけだよ。そうじゃないと、新たな挑戦者が片端から帰らぬ者になってしまうからな……」
ギージ 「こう、壁に張り付いて魔法陣の脇を抜けてみるとか…」
ダード 「なんなら、チャレンジしてみてもいいぞ? やってみるか?」
ギージ 「う……き、今日はやめとく」
その後もダンジョンを順調に進むクレイ達。
敵はほとんどクレイが接近するまえに魔導銃で倒してしまうので、他の者達は出番なしである。
クレイ 「これなら前衛のお荷物と言わずに済みそうだな?」
ダード 「…嫌味か」
ダード 「ふん、まぁ、確かに、いつもの逆だな。いつもは後衛の弓士やら魔法使いを守って前衛職だけが奮闘する事になるのが多いんだが。弓士はこのダンジョンではあまり役に立たないしな、ゴーレム相手には弓ではよほどの剛弓でもない限りは威力が物足りないからな」
ジョン 「弓だって関節部などの弱点を突けばゴーレムを倒す事もできるさ」
そう言いながらジョンは新たに現れた一体のストーンゴーレムの膝関節部分を矢で射抜いてみせた。ゴーレムにどれくらいのダメージがあるのか分からないが、少なくとも関節に矢が挟まった事で足は動かなくなったようで、遅い歩みがさらに遅くなった。
ジョン 「動きを止めれば、あとは削って仕留めるだけだ」
ダード 「止まってねぇし。それに、弓だけではゴーレムを仕留め切るのはかなり大変だろ?」
ジョン 「その細剣だって一撃でゴーレムを破壊できるほどの力はないだろう?」
ダード 「まぁな。だが……」
ダードがクレイを見た。それを受けてクレイが魔導銃を撃つ。弾丸が命中し、ゴーレムの胸頭部が吹き飛び、ゴーレムはゆっくりと倒れていった。
ジョン 「彼の武器が破格なのは認めるけどな」
ダード 「魔法使いなら、一撃でゴーレムを倒せる攻撃力があるヤツもいるが、魔力を温存しなけりゃならないからなぁ」
クレイ 「俺の銃も弾が切れたら終わりだぞ?」
トニー 「弾はあとどれくらいあるんだ?」
クレイ 「まだ、今のペースなら数週間は持ちそうな量があるが。数が多くなって
ダード 「数時間は撃ち続けられるって事かよ? それでも十分破格だろ…」
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