澱んだ春に触れるなら

春乃よど

春の澱み

枕の裏を捲れば、奇妙な澱みの春が香る。

やがて日常と変わる世界の乱れは、いわばそれと同じ。

貴方の影が見えなくとも、視界は貴方を認識する。

私は貴方を肯定する。

その場合、影の有無は大事ではない。

大事なのは貴方がいること。

そこに貴方があって、私の視界が貴方を捉えた時、貴方の存在が確立する。

言葉があり、概念があり、感情や感性がある。

それらのいずれか一つでも、澱んだ春に触れるなら、きっとそこにあるのだろう。

同様に乱れも。

我々が生きる理由も。

この文の存在意義も。

川沿いの桜並木も。

水面に広がる花弁のタイルも。

貴方も。

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