本棚

第1話

 学生寮の備え付けの本棚はとても小さく、教科書以外で持ち込める本は5冊ほどしかなかった。

 私は何度も何度も読み返した詩集と見知らぬ街の風景ばかりの写真集と、親に勧められた本だけをそこに詰め込んだ。

 熱心な読書家というわけでもなかったのでそれで十分で、そこから本を取り出すこともめったに無かった。


 ある夜気まぐれに写真集を取り出したところ、本が抜けたその隙間から光がさしているのに気づいた。

 奥にランプなど設置されてなかったはず、むしろこんな小さな棚にそんなもの必要か?と全ての本を取り除くと、奥にあったのは夜の砂漠だった。


 月明かりに照らされた砂は美しく、月は空の穴のようだった。


 私はしばし見惚れ、その後そっと本を元に戻した。


 次の日ゆっくり本を取り出してみたところ、そこには壁があるだけだった。

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