第38話 人の生き死に

人の命の最期に立ち会ってきた者として。


自殺する人達がいる。

有名人だったりすると大騒ぎする。

全然、本人を知らない人がインタビューに答えていたり。


正直、うんざりする。


自殺までする人の追い詰められる感情について

よくよく考えてみたことがあるのだろうか。


簡単に死んではいけない。

そんな事はわかっているのだ。

そんな常識さえもぶっ飛んでしまうくらいの

苦しみから逃げたい。


例えば、同じ問題を抱えていても

周りに支えてくれる人がいるか?

休みをとって療養できるか?

人それぞれ。


特に鬱病の常識なんだけど、最悪に酷い状態の時には動くこともできない。

だから、死ぬことさえもできない。

しかし、そこまでいかない、又は治療で少し安定した頃に行動として実行してしまう。


それを、やたらにもっと苦しんでいる人も世の中にいるとか、誰かに話せばいいとか。


死にたい人は他人の事なんか考えられない。

誰かに話したところで、気持ちの解決にはならないのだ。


もし、どうしても自殺されたくないなら

24時間、一緒にいて見張るしかない。

そんな事、誰ができようか。


私の長い看護師生活でも病室から飛び降りた人が何人かいる。

私達は何故、自殺なんかしたの!なんて

思わなかった。

病院に入院すれば、自分を隠す事なんかできない。

痛み、吐き気、息苦しさ。

悶え苦しみ。

それも24時間襲ってくる恐怖。


その苦しみ方を知っているから。

辛かったよね。

私達、何にもできなくてごめんなさい。

それしか無い。


生きること。

死ぬこと。


その選択を他人があれこれ言うべきではないと考える。


そこまでの選択を簡単にしてる訳では

無いと思う。

どうか、死者に鞭打つような軽はずみな

言動だけは辞めて欲しいと切に願う。


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