第29話 かぐや姫別バージョン

かぐや姫はその人離れした魅力で

夜の男性を夢中にさせた。


五人の男が求愛してきた。


かぐやは思った。

(ばっかみたい。私の事なんか知りもしないでさ。見た目だけじゃん。

ちっ、無理難題でも言ってみっか。)


「皆様のお気持ちは嬉しゅうございます。

どなたもわたくしには勿体ない方ばかり。

お一人を選ぶなど畏れ多い事でごさいます。

なので、わたくしが申し上げます物を

お探しいただいた方に嫁ぎたいと思います。」



石作皇子には「仏の御石の鉢」、

車持皇子には「蓬萊の玉の枝(根が銀、茎が金、実が真珠の木の枝)」、

右大臣阿倍御主人には「火鼠の裘(かわごろも、焼いても燃えない布)」、

大納言大伴御行には「龍の首の珠」、

中納言石上麻呂には「燕の産んだ子安貝」


(んなもん、ある訳ねーもんね。これはさ、月にあるんだもーん。

あれ?五人と思ってたら、何だか貧乏くさいのがも1人いるよ、あれだれ?)


「貴方様はどなでしょう?」


「わたくしは、かぐや様の護衛の防人で御座います。わたくし如き、失礼極まりないとは

存じております。なれど、なれど、、。」


(はぁーっ。めんどくさいったら、

こいつには、何にしょつか?

あー、月の雫にしよっと。これさ、月の住み人だって噂でしか聞いた事ないんだもんね。)


「では、貴方様には月の雫を。」


こうして六人は探しに行った。

五人は金でそれらしき物を捏造しただけ。


「まあ、皆様、ありがとうございます。

本物ならば、わたくしが手にすれば輝きまする。偽物なら砕けまする。」


結局、五人の持ってきた物は砕けちってしまった。


(んにゃろー。騙されると思った?

はい、はい、帰ってちょんだいよ。

ありぁ、まだ残ってたか、あの防人くんかぁ。)


「月の雫を見つけてくださったのですか?」


「はい。わたくしには、月の雫がどこにあるのかもわかりません。

そこで、この世の全てをお知りになっておられる方にお教え頂こうと、、。

お釈迦様のいらっしゃる西方浄土へ旅に

出ました。」


「それで?それで、どうなったのですか?」


「はい。お釈迦がお教え下さいました。

これが月の雫でございます。」


そう防人は答えるとすーっと姿は消えてしまいました。

防人のいたところに、ひとつの雫石がありました。


かぐやはそれを手にとりました。

すると雫石は静かにほのかに光り輝きました。 


かぐや姫はそれが防人の命だとわかりました。


「ああ、なんて残酷な事を言ってしまったの。

防人殿、、。」


かぐや姫は月の雫をそっと口に入れると飲み込みました。

「防人殿、貴方様はわたくしの中で生きておまります。」



かぐや姫が月からの使者のお迎えが来た時

吾子を抱いておりました。

その吾子はおのこでありました。







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