第14話 ハイジ 吟遊詩人

ハイジはデルフリ村の水飲み場で待っていた。


マンドリンを背負った青年が歩いてきた。


「あっあの人だわ。絶対にそう。」

ハイジは臆せずに挨拶をした。


「こんにちは、ようこそ、吟遊詩人さん。」


「君がハイジ?

これは、これは、可愛い人ですね。

どうぞ、よろしく。」

二人は握手をした。


ハイジは初め会った気がしなかった。

まるで、昔から知っていたような

不思議な気持ちがした。


山小屋までの森、小川の水、リスや子鹿達が

ハイジと吟遊詩人に挨拶をする。


「ハイジ、ここは君の本どおりの場所だね。」

吟遊詩人は突然、マンドリンを抱えて歌いだした。


ハイジは伸びのいい、穏やかない声に耳を澄まし目を閉じた。

過去が甦る。

おじいさん、ペーターのおばあさん、

クララのおばあさま、ヨーゼフ、、。


自然に涙がこぼれ落ちた。

吟遊詩人は、こうした時には何も言わない事にしていた。

これまでも多くの人達が吟遊詩人の歌で

涙を流す事があったから。

(誰にでも、思い出す事があるからね。

いいんだよ。)




こりぁ、もうどうしたって惹かれてしまうわよ、ハイジ。

さて、吟遊詩人の気持ちはどうでしょうか?

吟遊詩人はあちこちで歌を作り歌ってる訳でしょう?

つまり、アイドルじゃなーい?

女の子を落とすのなんて

お茶の子さいさいなんじゃないかしら?

うぶなハイジ、大丈夫なの??


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