第1話 プロローグ

「うおおおお!魔王を殺せ!魔王がいなくなればこの世界は平和になる!」


「私がいなくなったらあんたらはあんたら同士で争うだろうに、全くバカな奴らだ。でもいい。一度私は死んでやろうだが次は私の息子が魔王となるこれだけは譲れぬ」


 そう言って魔王が戦場へ一人で出て行く。いくら魔王だろうと、いくら無尽蔵な魔力があろうと一人で立ち向かうには釣り合わない。どう考えてもこちらが不利だ。部下は息子のために置いて行っている。息子の護衛をさせている。とても息子思いのいい人だった。これは多分魔王としてではなくこの子の母親としての決断だった。


「魔王、リューレリア!今度こそ我々人間の犠牲者の仇を撃つぞ!」


「こちらもそれは同じだ。お前ら人間のせいでどれだけ、どれだけの大切な人と部下を失ったというんだ。こちらだってなるべく仇を打ってから死ぬ、後世の為にもここは鹿と決着をつけるさ」


 そう言った魔王は最上級魔法を人間のいるところに放っていく。勿論、気づかれないように直撃10メートルくらいの位置まで隠蔽して。これを3発打ち込めば勇者以外はちゃんと死んでくれる。でも、こちらの体力が持たない。魔力が足りても精神力、体力はゴリゴリ削れていく。こうしていられるのも束の間早くこの場を離れなければ反撃が来る。こうしながらだいぶ戦力を削った時、不意を突かれ血が舞う。致命傷を負わされどうすることもできない。ここはもう魔王支配地を抜け、人間の支配地となっている。助けを呼ぶにももう遅い。これでもう楽になれる。これでもう魔王という地位に囚われずに自由に、そう思った。だが人間はそう簡単に許してくれない。これだけ致命傷を負わせれば反撃できないと思っているらしい。本当にできない。もう精神が持たない。


「お前はこれから実験動物と同じだ。これからは人間の好きにさせてもらうぞ」


 この映像は魔王城に転送してある。だからもしあの子が私のことを気にかけてくれていたら助けに来てくれるだろう。その時には魔王としての任務が果たせなくなっている頃だと思う。でも、息子の成長した姿が見れればそれでいいい。


 こうして前代魔王は魔王の座を降りざる追えなくなった。

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