存在不可逆的35%のパラドクス

藍詠ニア

愛し空いされ相し合い

夏の日のこと

久しぶりに故郷に帰った

各駅停車なんて名前をした

レールの上を走るだけの怠け者と共に

敷かれたレールを踏み外した僕が

自尊心とともに故郷に戻ったのだ


ひしめき合う様になくひぐらしも

コンクリートから照り返された日差しも

全てが僕を拒絶していて

この世と思えない程の灼熱をゆったりと

見えぬ子供と足並みを揃えるかの様に

歩き出した


君と出会った小学校も

君と行った駄菓子屋も

君に告白した展望台も

全てがそのまま綺麗に残っていて


君がいた痕跡だけが綺麗に無くなっていた


逃げるように故郷を離れ

逃げるように都会に進学した僕を

君は恨んでいるだろうか

死ぬまで一緒だよと

死ぬ時も一緒だよと

守れなかった約束を責めるだろうか


君の生きた証を

僕は覚えているだろうか


とても奇麗な麦わら帽子

少し似合わない髪飾り

いつもつけていたお揃いのネックレス

澄み渡る青色のワンピース

とても目を引く奇麗なスラリと伸びた脚

年不相応な幼げな声

何よりも大切な僕だけの君


やっと18歳になれたんだ

たくさん約束を破った僕だけど

最後の約束は守りに来たよ


だから許して欲しいな

僕はやっぱり

君がいないとダメなんだ


愛してる

薄っぺらい言葉だけじゃ語れない

だから

君を見つけに行こうと思う

そしたらどこかで

永遠を添い遂げてくれるかな


夕暮れ時に

日差し以上に赤く血に染った展望台は

僕と君との愛が渦巻く

奇麗で美しいハッピーエンドへの片道切符




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