第43話 【審判講習会の準備が整う】

 真は大会前にいくつかの用事を足すために、先にバンコクへ移動した。その一つがJICAからの現地生活費をひきだすことであった。東京三菱銀行を通して振り込まれるため、三菱銀行バンコク支店に行き1月分の手当400ドルを引き出した。

 そして2つ目がこちらにきて少し英語の勉強をしてきたが、日本人学校で英検を受験することが可能だったため2ヶ月前に英検2級の筆記試験を受験して合格した。今回は面接試験に挑戦してきたのだ。

 高校時代の真は、英語をはじめ勉強を一つもしなかったことについては前述したが、32歳にしてやっと高校卒業程度の英検2級を合格することができた。タイでは普段タイ語で話をしているが、様々な場面で英語を使ってきたことが活きたのかもしれない。

 そして3つの目の用事は次の日、体育局に顔を出して近況報告をするとともに、今後のスケジュールを確認することだった。1月からシーサケット県に移動する予定であったが、2月18日〜25日までインドネシアで「アジアカップ」が開催されるため、そこにコーチとして参加するとなると、向こう学校での受け入れができないため保留となっていることがわかった。

 真にとっては、大人のチームの国際大会よりも、子どもたちへの普及活動が大切であることを伝えたが、野球連盟の考え方もあるからということでこの話はここで終えた。

 さらに、中学生の国際大会のメンバーの一人、1番ショートで活躍したイサーン地方チャイヤプーン県在住のゲッターが、高校進学をすると野球を続けられないので、スパーブリー県体育学校に進学して野球を続けたいという相談があり、体育局としてはスパーンブリー県体育学校の校長が快諾してくれているので、来年度からはスパーブリー体育学校の一員となることを確認することができた。

 この件をはじめ、野球が認知されていないタイの中で、野球というスポーツを継続していくことの難しさを痛感していたため、今後、自分のあとにコーチを務めるタイのメンバーの給与や処遇改善についても強く要請しておいた。

 11月22日(水)今回のタイでは初開催となる中高生野球大会「甲子園大会」には、日本のアジア野球連盟からの応援もあった。それは12月の国体に向けて、今回は「審判講習会」も兼ねて実施することであった。

 タイの野球連盟としては、国体で野球が初の正式種目になったことはさらに大きな出来事であり、タイ全土をあげて行われることを考えると、審判の技術向上も欠かすことのできない要素であった。

 今回は一部の地域から限られた参加者と考えれば、試合を通じて、審判の技術向上を測ることも納得のいくことであった。今回、日本の野球連盟がタイの国体、中高生野球大会「甲子園大会」に派遣させたのは、アジア野球連盟の審判長をつとめていた小岳克人さんであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る