第50話 警告の標識

 フェレスが僕の為にブレブと戦ってくれている。このチャンスを逃すわけにはいかない。僕は必至に頭の中のリストから更に深層に眠る標識へ干渉しようとやっきになった。


 とにかく掴まなきゃ。あのブレブを倒せる程の強力な標識――強力なもの、凄いもの、強いもの、さらに凄いもの、もっと凄いもの、もっと凄いもの、もっと凄いもの――


 頭がパンクしそうなくらいの勢いで思考を回す。そしてどこからか僕の頭の中に声が響いた。


『アクセス確認。最終警告。本当二コノ標識(禁ジ手)ヲ使用シマスカ?』


 抑揚の感じられない声が頭の中に響いてきた。コレだ! これが僕の求めていたもの。ただ警告まで発せられるなんてよほど危険なものなのか。でもこれでブレブが倒せるなら四の五の言っている場合じゃない!


「使用するよ!」


 こうしている間にもフェレスがブレブの猛攻を必死に防いでいる。だがらもう迷いはなかった。


『本当二? 本当二使用シマスカ?』


 し、しつこい! もうそんな場合じゃないのに!


「いいから早く!」


 僕が急かすと更に頭の中にメッセージが響き渡る。


『最終チェック完了。標識ヲ解放シマス。最終標識解放二ヨッテ多重召喚ガ可能トナリマス』


 すると僕の頭のリストに標識が幾つか追加された。これが危険な標識――えっとメルトダウン? バイオハザード? な、何かよくわからないけど凄そうではあるよ。

 

 その上で多重召喚――どうやら幾つでも標識が召喚可能なようだよ。これならこのエリア内でも召喚出来る!


 そして僕はその中から使えそうなのを選ぶ。


「にゃっ!」

「フンッ。全く鬱陶しいメスだったがここまでだな」

 

 フェレスがブレブに吹き飛ばされ倒れていた。嗜虐的な笑みを浮かべたブレブが巨大な剣を生み出しフェレスに近づく。


「させないよ! 標識召喚・レーザー!」


 僕は新たに覚えた標識を召喚し目の前に立てた――その瞬間だった標識から巨大な光の帯が伸びてブレブに向けて直進した。


「な、なんだそれは! クッ! ダークシールド!」

 

 ブレブが何か魔法を行使した。正面に漆黒の盾が現出され光の帯、多分これがレーザーだね。それを受け止めた。


「ははは、多少は驚いたがただの虚仮威しだったようだな!」

「それはどうかな? ハァアアァアアアアアア!」


 僕が魔力を込めるとレーザーの圧が更に増しブレブの魔法に押し込まれていった。せめぎ合うブレブの盾と僕のレーザー。


「す、凄いにゃん……」

 

 フェレスが驚きで目を丸くさせていた。僕もそう思う。だけど魔力の消耗が激しい。どうやらレーザーは放出している間も魔力が減っていくようだ。


「な、なめるなよ!」


 するとブレブの頭上に巨大な漆黒の槍が生み出された。まさかあれも同時に撃つつもりか!


「お前を消せばこれも消えるだろう!」

「ま、まずいにゃ!」


 フェレスが叫んだ。同時に漆黒の槍が僕に向けて放たれる。


「そんなものを使っていては避けられまい! 死ねィ゛!」

 

 巨大な槍が僕に迫る。確かにこのレーザーを使用している間、僕は動けそうにない。だけどね――


「標識召喚・一方通行!」


 そう僕が扱える標識はもう一つ二つだけじゃないんだ。僕が召喚した標識がレーザー標識の横に並びやってきた漆黒の槍が弾かれたように逆走した。その先には驚愕したブレブの姿。


「な、ば、馬鹿なぁああ!」


 槍が魔法を行使したブレブの身を貫いだ。これによって漆黒の盾も耐えられなくなりパリイィイィインという音とともに砕け、そしてレーザーがブレブを呑み込んだんだ――

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