第二章 新天地での活躍編
第18話 新天地にて
プロスクリ王国の砦を越えたが当然だがカシオン共和国の国境にも入るわけだからもう一つ砦を越えることになる。
もっとも紹介状はカシオン共和国向けのもある。砦の門を抜ける際にも紹介状を手渡せば話はすぐに通った。
「冒険者の方ですね。今はとても助かります」
「何かあったのですか?」
話は通ったが僕たちが冒険者だと知った時の兵士の顔つきが気になった。何か困り事がありそうな様子だったからだ。
「ここを出て道なりに進むと辺境の街リビアがありますのでそこまで行けば自然とわかると思いますよ」
リビア――プロスクリ王国側のギルドマスターが言っていた街だ。そういえばギルドマスターが何か困ってるようなことを言っていた。
どうやら隣国に来てすぐそのお願いが達成できそうだ。
「それと君たちリビアにつくまでは街道から外れないこと。冒険者といえいつ
「はい。わかりましたご忠告ありがとうございます」
僕たちは兵士にお礼を告げ砦を抜けてカシオン共和国の大地に足を踏み入れた。
「あたし他の国まで来たの初めてにゃ~」
「僕もだよ。一応話では差別のない平等な国だと聞いているけどね」
その話の通りならフェレスが偏見の目で見られることもないのかなと思える。
「この街道を進んで行くにゃ?」
「そうだね。とりあえず暫くは歩いてみようか」
標識の力に頼ってもいいけどまだ見ぬ国にやってきたのだから自分たちの足で移動して多少なりとも情報を掴んでおくのもいいと思う。
「賛成にゃ。折角だから景色を楽しむにゃ」
フェレスが鼻歌交じりにスキップしながら進みだした。少し浮かれてるようにも思えるけど、この国に来るまではいつ奴隷に堕とされるかという不安を抱えながらやってきたのだ。
多少は気が緩んでも仕方ない。その分僕が注意をしておかないと――
「ストップにゃ!」
そう思っていた矢先、フェレスの様子が一変した。真剣な目で耳を小刻みに動かし四つん這いになって何かをチェックしている。
「どうかしたの?」
「血の匂いがするにゃ。まだそう時間は経ってないにゃ。それによく見ると草に血が付いてるにゃ。ここで何かあって飛び散ったと考えるにゃ」
前言撤回。フェレスはやはり冒険者だ。浮かれているようで全く気が緩んでなかったのだろう。
「スンスン、こっちにゃ!」
フェレスが指さした方向には森が広がっていた。確か門番をしていた兵士からは街道を外れないよう言われていたけどフェレスは匂いが気になるようだ。
「……注意されてはいたけど行ってみようか」
「あたしたちは冒険者にゃ! 危険と判っていてもやらなければいけないときもあるにゃ!」
鼻息を荒くしてフェレスが訴えてきた。僕は首肯しフェレスと一緒に森に入っていく。
「スンスン、こっちにゃ」
鼻をひくひくさせるフェレスが何だか可愛い。この状況でそんなことを思うのは不謹慎かなと思わず口元が緩んだ。
「――ギェ」
だが、そんな考えも潰れた喉で無理矢理発したような不気味な声が耳に届いたことで消え去った。自然と緊張が高まる。
声は明らかに人ではなかった。
「出来るだけ音を立てないようにするにゃ」
言ってる本人はとっくに実演出来ていた。足音が一切感じられない。恐らく気配も自然と抑えているのだろう。これらは全て獣人特有のアビリティによるものだと思う。
僕もできるだけ息を殺して進もうと思うけどフェレスほどうまくは出来ない。そこで標識に何かいいのが無いか探してみたけどあった!
「標識召喚・静寂――」
魔法を唱えると『静かに』と書かれた標識が立った。これで音を伝わらなくさせることが出来る。標識の効果範囲は設定出来るようになっていた。最大では半径50メートルに限定されるが最小なら幾らでも縮められる。
標識の範囲を僕だけが対象になるようギリギリに狭めた。フェレスは自分の力でなんとかなっている。当然だけど範囲を広げれば魔力がそれだけ多く減ることになる。
標識は対象を僕に設定することで勝手に付いてくることにも気がついた。これでフェレスに迷惑を掛けることもない。
「また新しい標識にゃ」
「うん。これで相手が誰でも気づかれることはないよ」
「本当に便利だにゃ」
そして僕たちは更に奥へと向かう。
「これが匂いの正体にゃ……」
「ギャギャッ!」
「ギャッ!」
「グギャ~」
フェレスと一緒にそっと木から顔を出して覗き見るとそこには複数の生物。人間ではない。緑色の皮膚が特徴で小さな角を持つ化け物――ゴブリンだ。
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