第五淫まずは暗黒街を横切る
童貞は存在感がない、モブというカテゴライズが相応しい。
その結果、限りなく気配を殺すまでもなく死んでいる。
自ら声をかけるまで、彼は性欲さえも隠し通す事が出来る。
スラム街では乞食ぐらいの端金、正確に言えば首元にバーコードがあり、そこを読み取れば、そこから電子決済されるという公娼制度が違法に復活していた。
コンドームに使うお金さえケチられるため、避妊という発想も希薄である。
全力の無責任孕ませが暗黒街のあちらこちらである。
そこに右翼の街宣車がやって来て、その退廃主義を憂いていた。
「これこそが過激なジェンダーフリーの末路です!女性なんてまさしく子供を産む機械になりました!これで少子化対策は治りますが、日本はもう治らないのか?いいえ、それは違います、我々の最高の結婚によって合法的に孕まされる女性によって作られる未来の子供達こそがこの国の本当の希望なのです、どうか、こんな俺達でもセックスさせてください、俺達のセックス改善こそがこの国の礎になるのです」
そこに本当に過激なフェミニズムのピンク色に染め上げられた自衛隊から強奪された戦車がやって来て、その右翼の街宣車を破壊していった。
それは蹂躙跋扈された女性達の怨念の塊であり、途切れない絶望の怨嗟の協奏曲だ、それは、たかが小市民の偏見によって即座に揉み消されていいような内容ではない、視野の狭さによって、人権運動は大きく後退する事がある、本当の清らかな透き通った真実にたどり着けなくなる、堕落の真意すら、明確ではなくなってしまう。
そして、その後、その戦車もやさぐれたホームレスの違法所持された名刀によって鮮やかに真っ二つにされた、童貞はそのおじさんとすれ違うが、おじさんは気づかない、どうやら、おじさんはとことんまで
「プハァ」
レッドアイの味は変わらなかった。
こういうスラム街でも不可侵領域なのが居酒屋や水商売の類いだ、世紀末的になると、どうしても最後の希望が暴力団かそれみたいな不良の自警団になってしまう、先ほどのおじさんも結局、そういう人間によって殺されてしまうのだろう。
世がどんなに荒廃しても正義感や善意を失わない人間もいるのだ。
「まぁ、今の自分にはあまり関係ないか………」
童貞はこんな世の中を憂う者達を憂う。
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