拾われ子のスイ

蒼居ロク

プロローグ

第1話 龍と幼子

 大陸の上空を東の姿の龍がとてつもない速さで横断していく。

深い青色の身体は所々鱗が剥がれ血が滲んでいる。傷付いた龍はその口に布に包まれた幼子を咥えていた。


 ぼんやりとする頭で幼子は考えた。

 どうしてこうなったんだろう、と。

 思い出すのは、龍に咥えられる前の僅かな記憶。


 自分を見下ろす紅い眼の男。

 優しく暖かかった母の「出ていきなさい!」と言う怒声。


『(……ははさま……)』


 冷たくて鋭い声を思い出して幼子の眼に涙が溢れた。


『(……どうして……)』


 声をあげずに泣く幼子を咥えて、龍はただひたすらに飛び続けた。

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