第百十七話 車検の支払い、俺らは転移

「これが私の発明品! 『マシンラビット』と『マシンホーク』だ! 特許出願中だ!」


 特許出願中って……まぁ確かに画期的ではあるが。

 ん? ちょっと待てよ。


「おいシェダル、これ公道走って大丈夫なやつなのか?」


「既に車検は通した! ほら、ナンバーがついているだろう?」


「あ、ほんとだ」


 ちゃんと後ろにはナンバープレートが付いている……が、これはこれで新たな問題が生じている気がする、そうだ。


「……車検の支払いとかどうするつもりだ?」


 ナンバー登録したってことは税金やら車検やら掛かる筈だ。

 叔父さんも車が欲しいけどその辺がどうのこうの言ってたし。


「あぁ、その辺については心配するな、私が払っておくから」


「どこにそんな金があるんだよ?」


「ダンジョンで回収したモンスターの素材だ」


「あー……ってちゃんと換金してんなら俺にも……」


「大丈夫だ、まだ一銭も使ってない、今日振り込まれる予定なんだ、ちゃんと渡すよ」


「……ならいいけど」


 こいつ、いつの間に換金したんだ?


「いやぁ、インターネットとは便利なものだな! 換金もすぐできる、その分振り込みが遅い気がするが」


 インターネットかよ! こいつ数日前に目覚めたばっかりなのに適応が速すぎるだろ……。

 と、ここで、翔琉が手を上げた……なんだろう?


「いやいや、シェダルちゃん、ここは俺に払わせてくれ、折角譲ってもらったんだから、礼ぐらいしないと……」


 流石は御曹司だ、車検を払える金はあるらしい。


「そうか? ならお言葉に甘えて」


 まぁ、シェダル的にもそっちの方が金使わないで済むけど……。


「2つ分払ってあげるよ、いいかい? 薫」


「……ありがとう」


 随分太っ腹だな、こいつにはもう頭が上がらないかもしれん。


「それに、このバギーめっちゃかっこいいし! これをタダで貰えるなんて忍びないよ!」


 ……なんか、不思議と翔琉の目が輝いている気がする。

 乗り物好きなのか?


「よし、悠里! 家まで送るよ!」


「やったぁ!」


 翔琉と悠里は颯爽とバギーに乗り込んだ。


「……愁さん……家どこ?」


「あ……桐生地区の方だけど?」


「……近いから送る」


「あ、ありがとう」


 薫が愁を送るらしい……なんか嬉しそうだな、愁。


「あぁ、ヘルメットはちゃんと被れよ! ハンドルのボタンを押せば出てくるから」


 翔琉と薫がボタンを押すと、ハンドルの左右からヘルメットが出現した。

 うお!? すげぇ!


「んじゃ、今日はありがとな! 昇! シェダルちゃん!」


「バイバーイ!」


「それじゃあな!」


「……またね」


 4人は俺とシェダルに向かって手を振り、街へ向かって走り去った。

 俺は自然とその手を振り返した、奴らが見えなくなるまで。


「それで? 見たところによると、仲直りできたようだな? 笑みが出てるぞ?」


「え!? ま、まぁな!」


「何か言うことがあるんじゃないか?」


「あ、えーっと……」


 確かに奴らとの関係が改善(?)できたのはシェダルのおかげだけど……なんて言えばいいんだよ!?

 普通にありがとう? いやでもそれだけじゃ足りないような……。


「ふふふ、まぁいい、私はお前の笑顔が見られただけでも嬉しいからな」


「そ、そうかよ!」


「ほぉーれ、いい子いい子」


「頭撫でんじゃねぇよ! 子どもじゃないんだから」


「いいからいいから……よーしよし、いい子だ」


 シェダルは俺を犬みたいに扱っている。

 あぁもう! ……ちょっと嬉しいけど。


「……まぁでも、ありがとな! でも今度は普通にやれよ! あんな目は二度とごめんだ」


「分かっているさ、さぁ、私たちも帰ろう、卓郎さんが家で待っているかもしれん」


「お、おう!」


 シェダルが転移スキルに変身し、ホールを展開した。

 あぁ……揺れない移動手段はないものか……


「あ、あのさぁ……シェダル?」


「なんだ? またゲロ吐きたくないから入りたくないとかいうのか?」


「そう……とも言えるけど、それについて今度病院行くわ……」


 そうじゃないと言いたかったが、できる事なら入りたくないのは事実だった。

 翔琉の言う通り、なんか体がおかしいかもしれないから、病院に行こう……。


「別に慣れの問題だと思うのだがな」


「これマジで慣れないんだよ!」


「まぁいいから行くぞ!」


「うわぁ!?」


 俺はシェダルに引っ張られ、転移ホールへと入った。

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