第八十五話 俺は凄い? そうじゃない!

「はっはっは! またお前らが解決したか! すげぇな!」


  あれ? 俺は警察と救急車を呼んだはずだが? ……なぜだ? 俺は冒険者を呼んだ覚えはないんだが、何故剣さんがここに?

 似たようなことを聞いたら「今この事件は俺たち冒険者の上層部も調査に関わっている」らしく、現場に来たらしい、凄い権限だな……


「褒められたぞ! 昇! 喜ぼうじゃないか!」


「……」


 凄い、か。

 俺は凄くなんかない、シェダルの腕輪が凄かっただけだ。


「にしても災難だったな、まさか俺たちも未成年者が使用するとは思わなかった」


「一体どこであんなものを……なぁ昇はどう思う?」


 なぜ俺という存在に対して、「凄い」なんて言う表現を使うのだろうか?

 褒めるのはシェダルだけでいい筈なのに、でも、褒められてうれしくないとかそういうのじゃない。

 むしろ嬉しい、というか、ようやっと俺を認めたか、という傲慢な気持ちもある。

 実際、教室で似たようなことを言われた時も、若干ながら、そんなことを感じてしまった。


「おい! 昇!」


 俺は別に凄くなんかない、でも、そんな自分を凄いと言ってくれる人がいると、どうしてもそれで有頂天になる。

 これは一体なぜだろうか?


「昇!」


「!?」


 気が付くと、シェダルが肩を揺らしていた。

 俺は一体何を?


「どうした? 具合でも悪いのか?」


「……なんでもない」


 俺は平常なフリをした。


「……まぁとにかく、あの腕輪と携帯の入手経路をたどらなきゃな、また何かあったらよろしく頼むぞ! 同志諸君!」


「はい、ありがとうございます、剣さん」


 シェダルが頭を下げると同じタイミングで、俺も同じ動作をした。

 そうだ、今は腕輪と携帯電話の出所を探らなきゃな。

 今は変なことを考える時じゃない。


「さ、昇! お前はまだ学校があるだろう! 戻るぞ!」


『転移スキル!』


 シェダルは転移スキルに変身した。

 学校……戻りたくないな。

 でも今は戻らないとまずいか。


「あぁ……行こう」


 俺はシェダルの手を掴み、転移ホールへ入った。

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