XIV.呼び出されたので条件付けで飲んでやった
最果ての迷宮前———
「よかったのですか?彼らを行かせて」
好青年がロノスに問いかける。
「問題無いことくらいゾーノ君でもわかるだろ。彼は、いや、彼らは普通の存在じゃないことくらい」
ゾーノの表情が少し緩む。
「Aランク冒険者を倒したのはまぐれの様に見えましたけどね。彼は
「君が言うなら間違いないのだろうね。わが国で唯一、私を超えるとさえ言われている|over Zランクの君が言うなら間違いのだろうね」
「確証はありませんが、ただ、彼には惹かれるものがありましたね。いや、引く力あったのでしょうか。彼はこの迷宮で何かを成し遂げますよ」
「ほほう。君が無しえなかった150階層を突破するとでも言いたげだね」
「それだけなら良いのですよ。おそらく彼は、この迷宮を完遂、つまりは攻略する可能性があるという事です」
ロノスの表情が少し曇る。ゾーノは淡々と話しを続ける。
「彼からは計り知れないほどの力を感じました。ですが、彼はそのことに全く気が付いていない様子でしたしね」
「やはり君と私では人を見る目が違うようだね。君はまず疑いから入るのだろ? それじゃあギルドマスターは渡せないよ」
ゾーノは少し微笑む。
「結構。
そう言ってゾーノは
最果ての迷宮エントランス———
逢兎、イリ、ルナの三人はエントランスに転移してきた。
「もう帰って来たぞ」「Eランクだからだろ」「雑魚が無理してんじゃねえよな」
逢兎達はそんな陰口に聞き耳を立てることなく
「あ、、、」
逢兎はすれ違いになったゾーノを目で追う。ゾーノは振り返ることなく入って行く。逢兎も目をそらして外に出て行った。
「アイト君か。丁度良かった。君達を正式にCランクに上げようと思うのだが良いかな?」
「そりゃ別に構わないけど、何が目的なんだ?」
逢兎は自然な流れで疑いを向ける。
「君の強さなら申し分ないと思ってね。先ほどは急いでたので話せなかったがね」
ロノスは何のためらいもなく返事をした。
「ルナはあまり賛成できませんよ」
「僕は賛成だよ。早くもっと上のことしたいもん!」
二人は両脇から逢兎の目を見て言う。逢兎は二人から目をそらす。
「今回は特例での昇給になるんだよな?」
「そうだね」
「じゃあ、一つ、条件を出させてもらおうか」
逢兎は二人の前に出て言った。
「条件? 何だい?」
「難しいことは言わねぇよ。俺たちを自由にしろ。なに、俺たちに招集をかけない程度のものでいい。冒険者資格剥奪期間はそのままでもいい。簡単だろ?」
逢兎はロノスを睨みつけながら言う。
「ほほう。それは面白い。いいだろう。では一度冒険者ギルドで手続きをしてもらおう」
そう言ってロノスは歩き出した。逢兎が付いて行こうとするとルナに袖元を掴まれた。
「いいのですか?」
「自由な方が楽だろ? 下手に拘束されるよりいい」
「ですが…」
「大丈夫だって! 何かあったら僕がルナ姉ちゃんを守るから」
イリは腕をシュッシュッと何度か突き出しながら言った。思わず二人とも微笑んでしまった。
「ルナがイリちゃんを守ります」
ルナはイリの頭をなでながら言った。
「イリはもっと回りが見れるようになるところからだな」
逢兎はイリの頭に手を置くようにしてなでながら歩き出した。
「もー!」
イリは逢兎の腕にしがみつく。それを追いかけるようにルナも付いて行く。
冒険者ギルド———
ロノスが冒険者ギルドに帰ってくるとリーノがカウンターから声をかけた。
「珍しいですね。日中からいらっしゃるなんて」
「まあね。それより彼ら、アイト君達が来たら裏に通してあげて。少し話をする」
そう言ってリーノの返事を待つことなくロノスは行ってしまった。
それから少しして、逢兎達が冒険者ギルドに到着した。
「あ、リーノさんじゃん。ずっといるね」
「そんなことはないですよ。それより、冒険者ギルド長のロノスさんがお呼びです。こちらへ」
リーノは三人をカウンターのさらに裏側へと案内する。
「知ってるよ」
逢兎達はリーノに付いて行く。
リーノはすぐ近くの部屋の前で足を止めた。
「この先にいらっしゃいますので、くれぐれも粗相のないように」
それだけ言ってリーノは戻ってしまった。
逢兎はノックすらせずに部屋に入った。
「来たか。まあ座りたまえ」
ロノスは入って目の前のソファーに座っている。その向かいにも小さな机をはさんでソファーがある。逢兎は座ることなくソファーの後ろから背もたれに寄り掛かった。イリとルナは逢兎の横で立っている。
「座ってたら動くのにラグが生じるだろうよ」
「まあいい。これが君たちの新しい冒険者カードだ」
逢兎は置かれたカードを見る。
逢兎は手を翳し魔法陣を開いた。すると、カードの上に『自由活動者』の文字が浮かび上がった。
「あんたの魔力を込めればそのカードには刻印が刻まれる。認めるなら魔力を流せ」
「そんなことしなくても、、、」
「あんたの信頼度はその程度ってことだ。嫌なら俺らはEランクのままで結構だ。Cランクからは招集をかけれるんだろ。それに魔力を流せば俺らは招集できなくなる」
ロノスはしばし逢兎を睨み見つめる。逢兎は表情一つ変えずにロノスを睨みつける。
「どうやら、本気のようだね。まあいいだろう」
そう言ってロノスは手を前にかざし、逢兎の作った魔法陣に自身の魔力を流し込む。すると、字がカードに重なり、刻印として刻まれた。冒険者カードとしての機能は残っている上での刻印の仕方をしたのだ。
「これで君たちは自由だ。好きにしたまえ」
「だといいけどな」
三人ともカードを交換して部屋を出て行った。
「これで自由だし
「行くー!」「行きましょうか」
三人は冒険者ギルドを出た。外は既に日が傾いていた。
「宿とかあるかな?」
「探してみましょう」
三人は街を適当にうろつき回り、日が完全に沈み切った頃に宿を見つけた。入り口には『果てなき宿』と書かれている。
「三人でいくら?」
逢兎は入って早々に聞いた。
「一人一泊3,000ベリンだよ。冒険者なら2,200ベリンね。商人は2,500ベリンだけどもね」
受付にいた老女は新聞を見ながら返事をした。
「じゃあ一泊三人で」
「部屋は?」
老女はずっと新聞を見ている。
「どーする?」
逢兎はルナに問いてみた。
「一部屋で大丈夫ですよ」
ルナが答えると老女は新聞を読む目を三人の方へ向けて見開いた。
「あんた、
「えっ、あっ、その、っはい…」
ルナはぎこちない返事をした。
「そうかい」
そう言って老女は再度新聞を見た。
「一部屋なら少し負けてやるよ。6,000ベリンだ。好きな部屋の鍵持っていきな」
逢兎とルナは3,000ベリンずつ出して、適当に鍵を取って部屋に行った。
果てなき宿B110号室———
三人は宿の部屋に入るなり足を止めた。
部屋にはベッドが一つ、ソファーが一つ、茣蓙があった。
「茣蓙にテント置いて寝るか」
逢兎はそう言って茣蓙の上にテントを置いた。イリとルナも入って来た。
「二人は布団で寝なよ。三人で寝るのギリギリだよ?」
「僕はアイト兄ちゃんと一緒がいい!」
「ル、ルナも…。」
逢兎は諦めたようにテントのど真中で小さく横になって目を閉じた。
「もう疲れたし寝よう。ご飯は明日でいい?」
逢兎は眠そうに問う。
「え、ええ。大丈夫ですよ」「うん」
三人は川の字になって寝た。
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