第71話『お祖母ちゃんの大掃除』

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記


071『お祖母ちゃんの大掃除』   





 ええ、なんでえ!?



 リビングに下りてびっくりした。


 お祖母ちゃんが大掃除をやっている!


 床やらテーブルやら棚やらにオキッパになっていたガラクタだか呪物だか分からないものやら、読みかけの雑誌や魔導書やら、畳んだだけでほったらかしのネット通販の段ボールやらがまとめられ、何カ月ぶり、何年かぶりで現れた床とかを。一生懸命掃除機かけてる!


「あ、遮音にしといたんだけど、二階にも聞こえた(^_^;)?」


「いま気づいたとこぉ」


 魔法少女は魔女とは違うけど、魔法を使うんで、いろんなアイテムやら呪物が家中にある。

 たまに片づけというか、アイテムの配置換えをやる。

 お客さま、特に人間のお客さまがある時は、掃除めいたこともやるんだけど、魔法を使って一瞬でやってしまう。


 それが、今朝のお祖母ちゃんは、まるで普通の人間みたいにアナログで大掃除をやっているんだ。


「徒(かける)が来るんだよっ」


「ゲ、あのクソババア( ゚Д゚)」


 オゾケが走った。


 徒っていうのはお祖母ちゃんの妹で、お母さん同様、魔法少女にはならなかったんだけど、化物になった。


 若いころに朝夕新聞に入って論説委員っていう偉いのか怪しいのか分からない役職を勤めて、わたしが生まれた年には労民党ってとこから立候補して政治家になった。

 憲法改正に反対したり、沖縄に座り込みにいったり、あちこち、デモやら講演会に呼ばれたり、左翼とかリベラルとかでは名前の売れたクソババア!


 お祖母ちゃんとは年子だとかで、魔法少女の血も流れてるから、実年齢よりはウント若く見えるし、じっさい若い。


 記者時代には彼女をモデルにした映画も出来て、なんと自分で主演した。その後も二三本映画に出たり情報番組のレギュラーになったり。


 そんなこんなで学生時代からファンが多くて、リベラルのジャンヌダルクとかローザルクセンブルクとか呼ばれて、カケリストって呼ばれてる男のファンからは女神さまのように崇められているんだそーよ。


 気まぐれにやって来ては、お祖母ちゃんを権力の犬とか言ってケンカをふっかけてた。たいていマスコミだか政治家だかの友だちも同伴。


 べつに姉のお祖母ちゃんが恋しいとか姪のお母さんを可愛がるとか、まして、その娘のわたしの成長を愛でようとかの可愛らしい理由じゃない。


 お祖母ちゃんを怒らせたり悲しませたりすると魔法少女のオーラが出るんだ。


 そのオーラが、自分にもお仲間にもいいらしい。「お日様にあたるとセロトニンが生成されるようなのだよ」とお祖母ちゃんは――ヤレヤレ――という顔で言う。


 お祖母ちゃんは、文句も言わず、魔法も使わずに、このクソ妹の相手をしてやってたけど、本心では持て余してる。


 日ごろは絶対に話題にしない。だから、わたしもめったに思い出さない。


 そのクソババアが、年の瀬の押し詰まった大晦日にやってくる!


 せっかく『クリスマスイブの集い』で気持ちよく令和5年を締めくくれたというのに!


「お祖母ちゃん、明日は出かけてていい!?」


「だめ、メグリも居なさい(ㅍ_ㅍ) 」


 ちょっと……かんべんして……ジト目で見るのやめて……


 


☆彡 主な登場人物

時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生

時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女

滝川                志忠屋のマスター

ペコさん              志忠屋のバイト

猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)

宮田 博子(ロコ)         1年5組 クラスメート

辻本 たみ子            1年5組 副委員長

高峰 秀夫             1年5組 委員長

吉本 佳奈子            1年5組 保健委員 バレー部

横田 真知子            1年5組 リベラル系女子

加藤 高明(10円男)       留年してる同級生

藤田 勲              1年5組の担任

先生たち              花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸

須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。

その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部)

灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  

  

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