第47話『みんなで万博・2・アメリカ館』

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記


047『みんなで万博・2・アメリカ館』   






 前日は、夕方の7時には町家の宿舎に戻ってお風呂に入って寝た。



 ちなみに、これだけのお店なのに家風呂は無い。


 近くの、と言っても400メートルほど先のお風呂屋さんに五人で行った。


 これはこれで楽しい思い出なんだけど、主題から外れるんで、またいずれ。


 長旅の疲れと快適なエアコンのお蔭で、グッスリ眠れた。


 1970年なので、エアコンは諦めていたんだけど、さすがは船場のお店、業務用のごっついエアコンが撤去されずに残っていたので、超ラッキー! ちなみに、室内機は「あんたは自販機か!?」というくらいに図体も音も大きい。


「でも、同じようなのがお風呂屋さんにもありましたよ」


 ロコが言うと、みんな「そうだったっけ?」「あ、そうだった」と首を傾げたり頷いたり。


 まあ、それくらい家の中に居るのは反則って感じのエアコンではあった。


「このエアコンの恩恵を受けるんだから、電気代払わなきゃ申し訳ないよね」


 たみ子の呟きに、みんなで頷く。


 ちなみに、冷気の吐き出し口は、ちょうどたみ子の顔の高さで冷風独り占め。


 


「朝ごはん、どうしよう!?」




 起きるなり、佳奈子が叫んだ。


 五人も女子が居ながら、朝ごはんの事はすっかり抜けていた。


「どこかコンビニ探そうか」


 と言うと、四人ともこっちを向いた。


たみ子:「え?」


真知子:「こんび……?」


佳奈子:「なに?」


 あ、この時代にコンビニは無かったっけ!?


ロコ:「さすがメグッチ! それ、コンビニエンスストアのことですよね!?」


 え、ロコは知ってるの!?


ロコ:「一号店が、去年豊中にできましたけど、さすが万博の大阪でも、普及するには至ってません」


真知子:「なに、そのコンビニって?」


ロコ:「自分も見たことは無いんですけど、スーパーの小型版みたいな……」


 ロコの説明に耳を傾ける三人、ちょっと冷や汗が出た(^_^;)




 喫茶店のモーニングというプランも出たんだけど、ロコが「阪急のホームに立ち食いのうどん屋さんがあります!」と思い出して、ちょっとだけ遠回りして、おうどんとお握りで朝食。


 しょせんは立ち食いうどんと思ってたけど、けっこう美味しかった。


 宮之森は関東文化圏で、蕎麦やうどんの出汁はお鉢の底が見えないくらいに黒い。


 大阪のは透き通っていて、みんな頼りなさそうだったんだけど、食べてみると、すごくお出汁が効いていて美味しい。


 スタミナうどんというのにお握りが付いて160円!


 ちょっと得した気分。




 けっきょく、万博会場に着いたのは7時過ぎ。で、ゲート前には一学年分ほどの列ができていた。




 11時の開場まで汗を流しながら待つ……そして、開場!




 最初に行くのはアメリカ館と決めていたんだけど、ガードマンのお兄さんたちが人間の壁を作っていて、その横一列の誘導に従ってしか進めない。


 でもね、感心したよ。


 だれも文句言わない。それどころか、ニコニコ、ワクワクしながら列に並んでる。


 この行儀の良さと情熱は、いろんなところで役に立って、国際的にも評価されることになるんだ。


 でも、ちょっと胸が痛む。それって、阪神大震災とか東日本大震災の記憶だよ。


「グッチ、バテた?」


 佳奈子が気遣ってくれる。さすがはバレー部のセッター、チームメイトのことをよく見ている。


「あ、ううん、大丈夫だよ(^_^;)」


 ボランティアなのか、アメリカ館の気遣いなのか、フォークソンググループが演奏とかしてくれて、列の前後の人たちともお話とかして、一時間もたたずに入館できた。


ロコ:「うわあ、柱が一本も有りません!」


たみ子:「ほんとだ、噂には聞いてたけど、すごい技術ねえ」


佳奈子:「これって、もう少し大きくしたら、バレーボールとかの会場にできる」


ロコ:「野球場だってできるかもしれません!」


真知子:「野球場はどうかなあ、容積比でいったら、これの十倍じゃきかないよぉ」


 いやいや、できるんですよぉ、あちこちにドーム球場がね。


 でも、コンビニで失敗してるんで言いません(^_^;)


ロコ:「みんな、月の石ですよ!」


みんな:「「「「おお!」」」」


 わたしも月の石は見たことないので、テンションが上がる!




 宇宙の神秘!!




 それは、宝石のように金属の爪の上に鎮座ましまして、その神秘をいやますように、直上からライトを当てられて神さびていた。


真知子:「ビビっときた! これを『アルテミスの涙』と命名するわ!」


みんな:「「「「おお!」」」」


 単なるJKの思い付きなんだけど、真知子の命名と、わたしたちの感動は、またたくうちに周囲に伝染。「アルテミスの涙だって」「アルテミスの涙」「すてきねえ」「アルテミ?」「月の女神よ」「さすがアメリカ!」「ロマンチック!」「アルテミスの涙!」


 ビビッとくるのは、松田聖子が何度目かの結婚をした時の名セリフだけど、ひょっとしたら、これが歴史に残るかもしれない。


ロコ:「月って、大昔に巨大隕石が地球に衝突して、その時の地球の欠片だっていう説があるんですよ」


わたし:「え、じゃあ、この月の石って数億年とかぶりで里帰りしてきたとか?」


真知子:「うん、ますますアルテミスの涙ねえ」


みんな:「「「「うんうん」」」」




 それから、アポロ宇宙船と着陸船の本物にも感動し、もうちょっと見ていたかったけど、外にはまだ数千人の人が順番を待っている。残念だけど、15分ほどでアメリカ館を出た。


 それから『人間洗濯機』に目を剥いて、テレビ電話には、思わずスマホを出して自慢したくなって。


 どこの国か確かめもせずに入って空いてるパビリオンで涼んだりして、船場の宿舎に戻る。


 帰る途中でスーパーに寄って、晩ご飯と明日の朝ごはんを買って帰ったよ。


 さあ、明日はどこのパビリオンに周ろうかなあ(^▽^)/


 


☆彡 主な登場人物


時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生

時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女

滝川                志忠屋のマスター

ペコさん              志忠屋のバイト

猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)

宮田 博子(ロコ)         1年5組 クラスメート

辻本 たみ子            1年5組 副委員長

高峰 秀夫             1年5組 委員長

吉本 佳奈子            1年5組 保健委員 バレー部

横田 真知子            1年5組 リベラル系女子

加藤 高明(10円男)       留年してる同級生

藤田 勲              1年5組の担任

先生たち              花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀

須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。


  

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