第15話『入学式・2』
巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
015『入学式・2』
威風堂々のBGMが流れる中、式場の体育館に入る。
BGMは威風堂々だけど、全員サンダル履きなので微妙に締まらない。
ペッタンペッタンペッタンペッタンペッタンペッタン………………
なんだか人に化けた両生類が行進してるみたい。
あ?
サンダルに気を取られて気づくのが遅れたけど、お祖母ちゃんのオーラを感じる。
振り向くわけにはいかないけど、新入生の保護者席に普通に座ってる感じ。
最後までグズってたけど、やっぱり来てくれたんだ。
ちょっと嬉しい、家に帰ったら正直に「ありがとう」って言おう。
真ん中の通路を挟んで右が男子、左が女子に分かれて座る。
チラ見すると、足を組んだりだらしなく座ってる子が一人もいない。背筋が伸びてない子はいるけど、みんなちゃんとしてる。
ヨイショ
深く座りなおして背筋を伸ばす。威風堂々がフェードアウトして司会の先生がマイクの前に立つ。
「ただ今より昭和45年度入学式を挙行いたします。一同、起立」
ザザ!
全員同時だと、起立するだけで迫力!
で、緊張する。
「校歌斉唱」
え……なんか抜けてるような?
ゆぅたかに萌える糺の森のぉ 東に聳えし学び舎ぁにぃ……♪
校歌は普通っぽいんだけど……微妙に違和感。
あ、そうか国歌斉唱がないんだ。
壇上を見たら校旗と自治体の旗しかないし……ま、いいけど。
入学式は小中で二回経験済み。昭和の入学式ってどんなだろうって思ってたけど、君が代と日の丸が無い以外は令和の時代と変わらない。ま、上履きのサンダルは宮之森だけかもしれないしね。
挨拶の度に立ったり座ったりして、いよいよ担任紹介。
「それでは、一年の学年主任を紹介します。藤田勲先生」
あ、うちの担任、学年主任を兼ねてるんだ。
学年主任をやるんだから、並よりは偉い先生なんだろうけど、最初の印象がセサミストリートだったから、なんかギャグアニメの実写版みたいな感じ。
「教頭先生からご紹介をいただきました藤田です。担任と学年担当の教員を紹介いたします」
へえ、司会の先生、教頭なんだ。
「では、一組……」
藤田先生が読み上げると、教員席から順次先生が立ち上がって舞台に上がっていく。
それまで反応の薄かった新入生の席から好奇心のオーラが立つ。
控え目だけど、露骨に当たり外れのオーラだから面白い。
四組の花園先生は新卒っぽい可愛い先生で、女子を中心に――うわあ、いいなあ――的などよめき、実際は溜息なんだけど大勢がため息つくと、けっこうな圧があって、花園先生はいっぺんに真っ赤になる。可愛い(^o^;)。
ドンケツ8組の吉村先生は再任用? どう見ても六十をいくつか過ぎている。
昭和45年で六十過ぎ……ってことは、明治生まれ?
ちょっと感動。生きてる明治生まれって初めて見た!
生徒の反応は……8組のあたりから残念オーラ、他は、ちょっと微笑ましく感じてるみたい。
教科担当は、うちの担任は英語のリーダー。セサミストリートだから、やっぱり英語的な?
グラマー担当は妹背先生。グラマーと云ってもナイスバディーの妹系の女性ではない。小柄な、でもおっかなそうな男の先生。
で、リーダー、グラマーってなんのことだろう?
先生の紹介があって、PTAやら事務からの諸連絡があってお終い。
「新入生が教室に戻ります。新入生、起立!」
ザザ!
藤田先生に先導されて式場を出る。保護者席のお祖母ちゃんが見える……ゲ、化けすぎ! 若作りしてくるだろうとは思ったけど、どう見ても五歳上くらいのお姉さんという感じ。
で、手ぇ振らないでよ(#'∀'#)!
教室のある北館二階まで戻って来て、またビックリ( ゚Д゚)!
なんと、あの十円男が廊下にいるし!
そんで、あたしたちに紛れて教室に入って来るし!
そんで、謎だった出席番号5番の席に座るし! 先生も平気な顔してるし! 前の4番も後ろの6番も我関せずだし!
ひょっとして、わたし以外見えてない? ひょっとして悪魔!?
いるんだよ、悪魔って! 魔法少女が居るんだから、悪魔もいるよ! お祖母ちゃん言ってたし!
ひょっとして、あの無茶な若作りは、この悪魔に対抗するため(;゚Д゚)!?
早くも昭和に来てしまったことを後悔し始めた(-_-;)。
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校一年生
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
宮田 博子 1年5組 クラスメート
藤田 勲 1年5組の担任
須之内写真館 証明写真を撮ってもらった、優しいおねえさんのいる写真館
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