第7話
二十分ほどすると警察の車が来た。パトカーではなく普通の乗用車でやって来た。気を使ったのだろうか、二人の私服の刑事だ。三十代くらいと五十代くらいの二人。
「あなたが電話をくれた中川翔子さんですか」
「はい、そうです。それでお話というのはなんでしょう」
翔子は自分から言うつもりはなかった。それにしても容疑者に対する態度ではないように思えた。それとも陽動作戦なのか?
「実はですね、中川義彦さんはこちらのご家族の方ですよね。申し上げにくい事なんですが現在、東京の病院で入院していまして、殆ど意識がない状態なんですよ」
「えっどう言う事でしょう」
「それが同居している女性に刺されたようでして。勿論その女性は殺人未遂で逮捕されましたが、中川義彦さんから預かっていたという手紙がありまして。事件が事件ですから、看護師さん立会の元で読ませて貰いました。今回の殺傷事件の前に翔子さんとの言い争いがあったらしいですね。ああ、心配には及びません。貴方の正当防衛は立証されています。ただ貴女とお父さんとその女性との間で何があったのか伺いたかったのです」
「はぁその前に父は助かるのですか」
「私どもが直接聞いた訳ではないので警視庁に問い合わせないとなんとも言えません。我々はあくまでも事件の裏付けを調べるのが仕事ですので、あっそうそう病院名と住所と電話はお伝え出来ますよ。一応お話は以上です。もしかしたら調書を作る必要があるので一度本署に来て頂きたいのですが」
二人の刑事はそう言って帰って行った。話は以外の方向へ進んでいた。あの女は生きていた。ではあの公園で中年女性が死んでいたのは? 翔子の早合点だったのか、公園名まで書いていなかった。それを同じ公園と勘違いしたようだ。それにしても強かな女だ。おそらくあれから父は頭を怪我した女性を連れて家に戻ったのだろう。それから更に言い争いになって包丁を持ち出したのだろうか。
冷たく言えば父の自業自得だろう。そんな女と一緒に暮らした罰だ。おそらく母も同情する気にさえなれないだろう。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます