第18話 道端の未解読暗号


「あぁ了解。」

私たちは繋げたままこの建物を後にする。


「そんじゃ、地球調査、いってきます。」

「よっしゃー。」

楽しみでフフフな顔をしながら画面越しの灰色くんへ伝える。

「いってらっしゃい」


さて、キッサテンを出てすぐ。

変わらない空を見て、外の空気を吸えたのも束の間。

私たちが振り向くと、

ノーザが下を見つめ、立ち止まっていた。


……。


早速彼へ委ねる。

「これは一体なんでしょう?」

「あー、来るとき気になってたやつ?あちこちにあったもんな。」

「ほらこの今踏みつけてる地面に浮き出た模様だよ。白いやつ。」

んん?


「えー。横断歩道って言って、歩行者が向かいへ行くために通るところだと道路の利用者に示しているんだ。」

はぁん。そのためにあるのか。これ。


「それってなんでこの示し方に決定したのですか?」

「ええ?……ちょっと待ってて、調べるわ。」

地面に張り付いている太くて規則的な白い線。それの由来を聞いているようだ。


「えーっとね、今調べてるんだけれど……」

「お?」

「日本での横断歩道の始まりは1920年(大正9年)にまで遡る。」


???


「東京の錦糸町で路面電車を横切るために設けられた。

この横断歩道は、当時は電車路線横断線と呼ばれ石灰粉で書かれていた。」

「???つまりどういうこと?」

「……まず日本って言うのはここ、僕らがいる国のことで──」

「国って何?」

あれ、なんだなんだ?私たちが知らない概念の説明の最中に知らない概念が出てきたようだ。先生の説明とかでもしょっちゅう起こるから困る。


そのくらい違う世界なのだろうか。


「国から説明しなきゃいけないのかぁ……困ったなぁ。」

僕らがいる……と言っているということは場所を示唆する何かなんだろうけれど。


「君たちの星には星の土地をを分断するような人間の決めた……境界は無いの?」

「無いなぁ、まぁ、位置と土地に“コード”はついているけれど……」

「あっ、ふーん。」

「そう言う面倒そうな境界線があるということ?」

「まぁそうなんだけれど……民族や言語、考え方によって引かれたりしてて、その区画ごとに大事な決めごとが決まっているんだよね。」

「はぁ?おいおい、なんだか、複雑なことしてるなぁ。」

「不必要だし大変だよ。そんな境界。取っ払っちゃいなよ。」

「……。」


……話が脱線。進んでいた方向ではないどころか、このままどこまでも転がっていく気がする。

でも知識を得るのってこういうのが大事なんだと思う。


「〇〇年っていうのは時間の単位で、地球は365日で一年。今までに起きた出来事がどのくらいの時代のことか分かるように添えられて……」

「あー。それはほんのりと授業で習ったかも。」

「地球の時間は現実時間だけ考えればよくて一直線で綺麗でさ、羨ましいよね。」

「え?」

……



「で、1960年(昭和35年)に横断歩道表示が法律化され、このときはゼブラ模様が交互に配置されたデザインであり、

わずか5年後には、単純なはしご型の模様に変更され、1992年(平成4年)より、はしご型のゼブラ模様から両端の側線がなくなった国際的なデザインが主流になっていく。これによりタイヤの通過によって消えやすい箇所の補修の手間を省けるのと、雨水が溜まることを防ぐことができる。だってさ。」

「へー。」

「こいつにもそんな歴史があって今の形になっているんだな。」

「はしごの形なら腑に落ちる気がしないでもないね。ここは移動できるっていう目印として」

「……地球人、納得。」


こんな感じで私たちの調査は進んでいく──。

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