第6話
七月最初の月曜日、一年生の集団下校が終わった。今日からみんな、好きな友達と帰ることになる。これまた、ほたるにとって大問題だった。
朝礼前の空き時間に「~ちゃん、一緒に帰ろうね」と約束し合っている子がいる。もちろん、ほたるにお呼びはかからない。
(うちは遠くて、みんなとは帰る方角も違うもんねー)
そう自分に言い聞かせる。
昼休み、ほたるはいつものように読書をして過ごした。クラスの本棚はもう三巡目に入っている。担任の小川先生は「深山さんは本が好きね。今度新しい本を図書室から借りてきてあげる」と声をかけて職員室へ行ってしまった。
小川先生はお母さんより若い。若くて可愛らしくて優しいから、みんな先生が大好きだ。だけど、先生は面倒くさいことが苦手で、ほたるがクラスで浮いていることに気づいていながら、気づかないフリをしている。入学してすぐの頃は、クラス全体とほたるを交互に見て困ったような顔でもじもじしていたけれど、いつの頃からかそんな素振りも見せなくなった。
小川先生は、ほたるのことを読書好きの生徒に決めた。そうして時々ほたるにも「深山さんは、本当に読書好きね」と声をかける。先生にそう言われるとほたるもそんな気がしてくる。ちゃんと先生はほたるのために、時々図書室から新しい本を借りてきてくれる。
一年生はまだ図書室を使えないから。
小川先生は優しいと思う。ただちょっと、面倒くさいことが苦手なだけ。
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