side 公爵当主 デルバート

私はデルバート。


スターコイド公爵家の当主だ。


若くして、当主になったことで風当たりも当然強い。


王宮の元老院のくそジジイどものご機嫌伺いもやっていられない。


だが、そんな事がどうでもいいと思える程の事件が起きた。


妹のフェリシラが…・・重病人として戻ってきたのだ。


それに私は嘆き悲しんだ。


そして、事情を調べていくうちに、全ての元凶が第二王子にあることがわかった。


婚約者である奴が……フェリシラを真っ先に守らなければならない奴が……


妹を傷つけた。


私は復讐の鬼になった。


といっても私は公爵家当主。


当然、軽はずみな行動をすれば、王国を危機に晒してしまう。


それだけは出来ない。


だが、やれることはある。


少なくとも……第二王子には妹と同じ目にあってもらう。


それが最低限の罰だ。


国王の息子だからと許す気には到底なれない。


絶対に成し遂げる。


そこで、私は真っ先に目をつけたのはウォーカー家だ。


地位こそ低いが、その名は王国で知らないものはいない。


そして、ウォーカー家の作り出す武具には高い価値がある。


それを自由自在に使うことが出来れば、今後の工作に大いに役立つ。


自由に……といったが、子飼いであるウォーカー家に命令するのは然程難しくない。


武具だって、手に入れるのは簡単だろう。


だが、重要なのは独占することだ。


私の手でウォーカー家の武具を独占する……こうなって初めて、切り札となるのだ。


そのためには生半可なやり方ではダメだ。


王国とて、ウォーカー家を少なからず押さえ込んでいるから……


私がフェリシラをウォーカー家に降嫁することに躊躇いはなかった。


それが貴族なのだ。


例え、どんなに可愛い妹でもその呪縛から逃れることは出来ないのだ。


「フェリシラ。君に縁談の話があるんだ」


痛々しい妹の姿を見るのはつらい。


「お兄様……私はもうダメです。このまま死なせて下さい」


妹は生きる力を失っている。


だが、復讐のためにはどうしても妹が必要なのだ。


私はあらゆる方法で妹を元気づけた。


しかし、全てが失敗した。


もはや、諦めなければならない状況……そう思っていると、一人の少年が私の前に姿を表した。


彼を見た時、全てを悟った。


神は私の復讐を応援してくれていると。


彼とはライル。ライル=ウォーカー。


私は知っていた。


彼はフェリシラを好きだ、と。


そして、フェリシラもまた、彼を好いてると。


この二人を出会わせれば、事態は変わるのではないか、と。


その思惑は的中した。


フェリシラはすぐに治療を受けることを決断し、婚約の件も了承してくれた。


貴族としてのフェリシラが復活したのだ。


だが、少しは考えてしまう。


フェリシラの気持ちを……。


妹のライル君への想いは本物だ。


妹の幸せを考えるならば……。


だが、ライル君は貴族としての地位を失い、今では庶民だ。


いくら、婚約破棄をされた妹であっても、そこまで落ちぶれさせる事は出来ない。


せめて、彼が貴族であれば……。


だが、その悩みもこれまでだ。


私の目の前にはウォーカー家の当主がいる。


ベイドとフェリシラの婚約の件で、二人で話をしたいと言って、来てもらっている。


「この度は愚息が本当に申し訳ないことをしました」

「いや、その件は不問にしたはず。それに貴方の息子さんが私の分まで動いてくれた。それで充分ですよ。私は貴方には何の感情も持っていない」


そう……当主はどうでもいい。


ベイドとか言ったか?


あの小僧だけは絶対に許さない。


妹を化物呼ばわりとは……必ず、お前を化物のようにしてやる。


だが、その前にこの話だけはまとめておかなければ……


「私はこの婚約は是非とも進めたいのだ」


意外かな?


当主が唖然とした顔になっている。


「いや、しかし、当の二人が納得するでしょうか?」


まぁ、無理だろうな。


妹は根に持つ性格だから。


「私はウォーカー家との関係さえ保てれば、それでいい」

「それは……どう言う意味でしょうか?」


私にとって必要なのはベイドじゃない。


ウォーカー家だ。


「ライル君を再び、ウォーカー家に戻す気はないかな?」

「申し訳ありませんが、それは出来ません。ライルには鍛冶師としての才がありませんから」


ふむ……


「ならば、才があれば、どうかな?」

「それならば、文句は何も。ライルとて、私の血を分けた息子ですから」


……これだな。


「私が全面的に協力して、彼を王国のコンテストで入賞以上をさせる。それでどうかな?」

「入賞以上……ですか? 正直、私に分かりません。デルバート様がなぜ、ライルにそこまで肩入れをするのか」


決まっている。


妹の選んだ男だからだ。


とは言えないか。


「知っているかな? 彼は先のコンテストで最優秀に選ばれた。これが理由で不服かな?」

「そんな……バカな。ライルには間違いなく鍛冶師としての才はないはず。『鍛冶師』のスキルがないのに……なぜ」


この男も結局、一つでしか物事を判断できない。


ライル君は間違いなく、この国の、どんな歴史を紐解いても、彼以上に優秀な鍛冶師はいないと私は思う。


それは彼の持ってきた剣がそれを証明している。


それも分からないようでは、この男も大したことはないな。


「ならば、それで話は終わりだ」

「少々お待ち下さい。ライルの件は承知しました。しかし、ベイドとて優秀な鍛冶師になる可能性を秘めております。3年……奴には修行をさせます。それまではベイドを婚約者ということにしてはくれませんか?」


ふむ……三年か。


これは面白くなってきたな。


三年後の王国のコンテスト。


そこでライル君とベイドがぶつかる。


それこそ、フェリシラを賭けて。


「いいでしょう。ただ、私はライル君を推させてもらう。それで構わないね?」

「はい。私はベイドを一端の鍛冶師に育て、立派な後継者とします」


これでウォーカー家との繋がりは万全だ。


どちらに転んでも、婚約は成立したのだ。


あとは……


私は翌日、ライル君とフェリシラを呼んだ。


そして別々に伝えた。


ライル君には、三年後の王国のコンテストに参加することを。


そして、フェリシラには……


「ライル君が王国のコンテストで入賞すれば、彼とは婚約者になってもらうよ」


と命令した。


私は苦笑いした。


私の命令でこれほど喜んでいるフェリシラを見るのは初めてだったから。


―――――――――――――――――


【★あとがき★】

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