『天使降臨』(2)

「ねえ、美保の事って、どう思う?」

「ああ?」


昼休み、亜矢はグリアに単刀直入に聞いてみた。

わざわざ人気のない所を選んで、亜矢とグリアは並んで座り、昼食。

相変わらず、亜矢にパシリさせて買わせたおにぎりを頬張りながら、グリアは気の抜けた返事を返した。


「ホラ、いつもあたしと一緒にいる、髪の長い……」

「ああ、あいつな。そいつがどうした?」


こんな事を聞いて、余計なおせっかいだって解ってる。でも—。


「いえ、どうしたっていうか……」


亜矢はそこで言葉を詰まらせた。

だが、グリアはそんな亜矢の心を読んだのか、僅かに目元が笑っている。


「あいつもなかなか美味そうな女だと思うぜ?」

「な、なに言ってっ…!!」

「だから、魂の話だって。なーに前と同じ反応してんだかなぁ、ハハハ!!」

「〜〜〜〜もういいわっ!!」


くだらない事で振り回され、本気で怒る気も失せた。

亜矢はフイっとそっぽを向いた。

そのまま、二人は沈黙。

いや、おかしい。

こんなに不自然な沈黙が続くなんて。

グリアは、いつも隙さえあれば亜矢をからかうような言動を起こすのに。

亜矢はふと、視線をグリアの方に向けた。

おにぎりを食べ終えたグリアは座ったまま顔を少しだけ伏せ、鋭い視線だけは上に向け、どこか虚空を見つめていた。


「どうしたのよ、あんたらしくない」

「嫌な感じがすんだよ」

「え?」

「どうやら、面倒な奴が来ちまったかもな」


グリアの言葉の意味が解らず、でもどこか真剣な顔のグリアに、亜矢も何故か緊張した。


「あんた以上に嫌な感じがする人なんていないと思うけど?」


いつものお返しとばかりに亜矢は皮肉を込めて言ったが、グリアの表情は変わらず。


「てめえ、今日の口移しはタダじゃ済まさねえぞ?」

「ちょっ!変な事したら噛むからね!?」

「へえ、オレ様に勝てると思ってんのか?」


口調だけはいつものグリアだった。

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