第25話 レヴィン、自信を取り戻す
あっという間に三時限目まで授業が終わり、お昼休みとなった。
初めて受ける授業は新鮮で、色々と興味が尽きない。流石は異世界だとレヴィンはまだ若干興奮気味だ。レヴィンの下にはアシリアとシーンが訪れていた。昼食のお誘いである。もちろんこれも『中学三年デビュー計画』の一環である。Bクラスだが人気があるらしいアシリアと、Aクラスの寡黙な美少女シーンとの昼食三重奏である。注目されないはずがない。ちなみにロイドも誘ってみたが、今回は他の友人たちと食べるからと断られた。大人しくて控えめなロイドでさえ何人も友人がいると言うのに、以前のダミーレヴィンは一体どんな存在だったのか増々気になるレヴィンであった。食堂に行くと、結構な混みようであった。何とか空いている席を見つけて確保する。そして三人は持参した弁当箱を開いた。
「もう大変だよ~。お茶会に誘われたりして」
「……つきあいは大変」
「そんなのあんの? 女子は大変だな。男で良かったわ……」
「男子もあるらしいよ。これから誘われるんじゃないかな?」
「ふッ! アシリアともあろう者が、まだ今までの俺を過大評価しているようだな」
「た、確かにレヴィンは暗そうで、やる気もなさそうで、友達もいないけど……」
幼馴染から現実を突き付けられてレヴィンはテーブルに突っ伏した。
「でも今のレヴィンを見てるとそうは思えないよッ! 何かがみなぎってるよッ!」
「確かに目力を感じる……」
レヴィンは二人のフォローに思わず涙した。
「それにレヴィンはカッコイイんだから大丈夫だよッ!」
「うう……。ありがてぇ! ありがてぇ!」
シーンがアシリアとレヴィンを交互に見てニヤニヤしている。
それに気づいたアシリアは顔を赤くして俯いてしまった。
「必ずレヴィンの変化に気付く人が出てくる……」
今日のシーンは珍しくよくしゃべる。
「少なくとも私は考えを改めた……」
「そりゃどーも」
レヴィンは一転、真剣な眼差しを向けてくるシーンの視線から逃れるようにプイッと顔を背け、素気ない態度を取る。そこへ立ち直ったアシリアが鑑定の話題を振ってきた。
「ところでレベルは何だった~? あたしは15だったよ~」
「む。同じ……」
「俺は17だった。春休みの成果だな」
恐らくダライアスもそれくらいだろう。最初は前衛として頼りなかった彼も、今では上手く立ち回ることを覚え、剣を振る姿も様になってきている。
「有能で性格も良さそうな優良物件は見つかったか?」
「良さそうな子がいても皆が皆、探求者になりたい訳じゃないからね~。難しいかも~」
「狙い目は貴族……。
レヴィンは誤解していたのだが、アウステリア王国は基本的には
「そうだな。Sクラスのヤツらも調べないとなぁ」
「平民でも認められた人は職業変更できるんでしょ?」
「まぁ、そう言うヤツらは王国の騎士団や魔法兵団に入るんだろうな」
平民に力をつけさせないために職業変更が禁止されているとは言っても、独立国家として周辺国や魔物からの脅威に備えなければならない訳で、才能があれば取り立てられて徹底した管理体制の下で職業変更が行われているのは当然と言えば当然の話だろう。
お昼休みの時間も終わり、午後の授業が始まった。午後一の授業は職業別の講義と実習であった。暗黒導士は魔導士の中では一番比率が高いため、人数の関係から大講堂での授業である。教師は魔導士然とした初老の男であった。雰囲気重視なのか、黒いフードつきのローブを身に纏っている。
「お主たちはもう既に強力な暗黒魔法を習得できている者もいるだろう。しかし、いくら
教師に聞いてみたところ、魔法中学校を出た者ですら、その魔法をちゃんと使える者は少ないそうだ。体の中に流れる魔力を感じ取り、それを練成した上、頭の中で魔法陣を正確に描き、それを現実に再現、展開することで魔法は発動する。
この一連の流れを正確に、かつ素早くできる者が高位の魔導士であり、上位ランクの
ちなみにレベル3の魔法には【
どれもレヴィンが最初の護衛依頼時に使用していた魔法ばかりである。
中学校で習った魔法しか使えないものと思い、嘆いていたのは間違いであった。レヴィンは嘆く必要などなかったのだ。今のところは全ての魔法を問題なく発動できているのだから。確かに学校以外で見つけられる魔法を身につけていなかったのはどうかと思ったが、それはダミーレヴィンの設定によるものなのだろう。とにかく、この事実はレヴィンに大きな自信を与えることとなった。そして世界最強を目指す上での大きなモチベーションに繋がったのである。
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