第20話 レヴィン、初登校する
レヴィンたちは春休み中、ほぼ毎日精霊の森に通った。依頼を複数同時に受注し、討伐依頼のある魔物だけでなく森の中で出会った魔物たちも倒していったので、戦い方も洗練され結構強くなることができた。そんな春休みがあっという間に過ぎ、四月に入った。
レヴィンとアシリアとシーンはシガント魔法中学校の三年生となり、ダライアスは相変わらず家の手伝いをしている。獣の肉とお金が入るようになり生活が改善されたため、ダライアスの母親のブリアナが味方に回ってくれたらしく、父親のノーブルは強硬に反対できなくなってしまったという話だ。
今日は始業式である。レヴィンはアシリアと共に登校すると、早速、クラス分けの名簿が張り出されている大きな看板の前に来ていた。そこは、既に多くの生徒でごった返していた。取り敢えず人だかりの外側へ並んでみるも、中々前へ進めない。そこへシーンもやって来たので、一緒に名簿を確認しようと共に並んでいたのだが、人の波に流されていつしか離れ離れになってしまった。
アシリアはレヴィンの制服の袖を必死で掴み、どうにかはぐれないようにしている。クラスはS、A、B、C、D、Eの六つに別れているらしい。去年はレヴィンがCクラス、アシリアがBクラス、シーンがAクラスだったと言うことだ。その他にもレヴィンは、アシリアとシーンの会話からいくつか情報を得ていた。平民だけであった小学校とは異なり、中学校では貴族と平民が混じって学生生活を送るらしい。小学校は十歳から十二歳で平民のみが通っており、一般教養などが教えられる。貴族はこの年代は主に家庭教師をつけるらしい。中学校は十三から十五歳で希望者のみが通う専門性が高い学校であり、貴族と平民が同じ場所で同じように授業を受ける。ちなみに大学校と言うのもあるようだ。十六歳から十八歳までの王族や貴族が集められ、エリート教育が施されると言う。
やがて二人は何とか看板の前へと流れ着く。少し離れた場所にはシーンの姿も見て取れた。名簿によればレヴィンとアシリアはBクラス、シーンはAクラスであった。レヴィンは前年のCクラスから昇級した感じだが、もちろん理由は分からない。それに六クラスの真ん中辺りであることには変わりない。それはともかく、アシリアと同じクラスになれたのは僥倖である。彼女は結構可愛いし、性格も穏やかで優しいため、恐らくクラスでも仲良くしたがる人間も多いと思われた。レヴィンとしては、それが『中学三年デビュー計画』の助けとなるはずだと考えていた。
「えへへ……。同じクラスだねッ! よろしくねレヴィン!」
「ああ、こちらこそよろしくな」
はにかみながら、体を近づけてくるアシリアにレヴィンは思わずドキリとさせられる。本来なら彼女より年上であるレヴィンに余裕があって然るべきなのだが、若い肉体に精神が引っ張られているのかも知れない。彼女が幼馴染である幸運をレヴィンは神――自称神の顔が浮かんだので――ではなく日本の
貼り出されていた名簿には個人個人に番号が振られていたので、その番号と同じ靴箱に自分の外履きを入れる。アシリアと共にプレートにBクラスと書かれている教室へ入ると、気のせいか雰囲気が変わった。黒板に張り出されている席順表に従ってレヴィンは自分の席へと向かう。席の位置はアシリアが廊下側で、レヴィンは窓際であった。窓からはここが街の中心部とは思えない程、緑豊かな中庭が見える。
「『加護なし』だ……」
「あいつが?」
あちこちからささやき声が聞こえてくるが、レヴィンはそれらの声を逃さぬように聞き取りながら席へとたどり着いた。
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