僕と彼女と「怖い話」の話
藤あじさい
前書
はじめに
最初に、言っておかなければならないことがある。
これはフィクションだ。実在の人物や団体、名称、場所、その他諸々は存在しない。僕が適当に付けたものであり、架空の作り話である。
それが真実かは兎も角として、この話をする前に、そういうことにしておかなければならないと僕は判断した。
とはいえ、とびきりのホラーを求めて求めてやってきた皆様におきましては、あまり期待をなさらないように。
これからお話するのは、ただの雑談の書き取りである。僕と彼女はよく「怖い話」の話をしていた。それは日々の合間であり、業務中の小休憩であり、コミュニケーションの一環としての雑談だ。
僕は当時、とある工業系商社で営業職をしていた。外勤――いわゆる外回りの営業である。そして僕のアシスタントとして、内勤――営業事務で働いていたのがその女性だった。
僕と彼女は、特別親しいわけではなかった。あくまで仕事上の関係でしかなく、彼女が休日何をして過ごしているかなどは、彼女が口にしない限り俺に知る由もないことだった。
けれども、だからといって仕事以外の話を全くしなかったのかといえば嘘だ。僕たちは時折、雑談をしていた。業務の合間に、休憩の最中に、ほんの気紛れの一時に。それらの話の中から、断片的にではあるが、彼女がどのような生活を送っているかを知った。否、知ったというのは正しくはない。だって、彼女が真実ばかりを口にしていた保証はないのだから。
でも僕は、彼女は嘘をつかない人だったと信じている。だから語られたいくつもの奇妙な出来事も、きっと全て真実なのだろう。少なくとも彼女にとっては、真実だったのだろう。
さて、前置きが長くてはどうしようもない。
これはあくまでフィクションだ。僕たちが日々、なんとなく交わした会話の一部の記録である。
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